小寺信良のIT大作戦

「今からロボットを現場投入できないか?」 増えた日本企業からの問い合わせ “頭脳”を作る韓国企業が感じた国内の変化(3/4 ページ)

フィジカルAIはどこまでいくのか

 フィジカルAIの技術、なかでもロボットや自動運転車などの物理的な制御を担うVLA(Vision-Language-Action:見て、言葉を理解し、行動する)は、何が強みになるのか。これを理解するには、従来型産業用ロボットの特徴を知る必要がある。

 従来型の産業用ロボットは、環境を固定し、ルールを組み込むことで、環境が完全であれば非常に高い精度と速度で動作できる。よってロボットの仕様に合わせて生産ラインや環境をあらかじめ設計し、固定する必要がある。

 しかし多くの現場は、環境を完全に固定できないことが多い。例えば時間の変化による光の反射の変化や、人間が関わることによるタイミングのズレ、位置のズレなど、変則的な状況に対して失敗しやすいことが従来型ロボットの弱点である。実際に多くの製造現場では、工程の50%以上が手作業に依存しているといわれている。

現場では器用な作業のロボット化が求められている|出典・RLWRLD

 一方でVLAは、パターン学習、変化の学習、運動学習を行う。よって非固定環境でのタスク実行を可能にするのが特徴だ。現時点でVLAは、顧客の要望に合わせて専用モデルを開発することになる。

従来型産業用ロボットとVLA基盤ロボットの違い|出典・RLWRLD

 だが現在のLLMがなんでもできると言われるようになったことを踏まえ、将来的にはフィジカルAIも学習を積み重ねることによって、汎用性を高める方向にある。1タイプのヒューマノイド型ロボットが、様々な作業用に切り替えて利用できる日が来るかもしれない。

 他方で現在のLLMがそうであるように、フィジカルAIが「AIが人間の仕事を奪う」的な反感を感じるかたもいらっしゃるかもしれない。だがそこは、少しニュアンスが違うようだ。

 それというのも、現時点で導入を検討しているのは、「人が足りない」という現場だからである。存在しない人のスペースにロボットが入るわけで、雇用を圧迫するわけではない。また導入を検討している顧客側も、「人間が行うには適さない」タスクを自動化したいと考えており、そのために同社へ相談しているという状況だ。

 ただ現実には、過酷な労働は賃金が高いため、あえてそうした労働に従事しているという人もいる。そうした人の雇用は、奪うことになるかもしれない。だがそれは過去にも、機械化や電動化といった旧来の手法で、人力を廃止してきた経緯がある。「本来は人間がやるべきではない」という作業がロボットに置きかわっていくのは、一つの人類の発展と捉えるべきなのだろう。

印刷する
SNSでシェア
SpecialPR

小寺信良のIT大作戦

ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。

この連載の記事をもっと見る

この記事の著者

関連記事

こんなメディアも見られています

ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。

メールマガジンを配信中
メールマガジンを配信中

国内外の業界動向、AIやクラウドなどの最新技術、キャリア情報など今知りたい情報をまとめてお届けします。

いますぐご登録

本日の新着記事

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia NEWS SNS

X @itmedia_newsをフォロー

インフォメーション

ITmediaNEWSをフォロー

あなたにおすすめの記事PR