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欧州議会、ソフトウェア特許法案の取り下げを要求

» 2005年02月03日 12時53分 公開
[IDG Japan]
IDG

 欧州議会の議員は、「純粋なソフトウェアへの特許を認める道を拓く」と批判されている法案を取り下げるよう欧州委員会に要求することを、圧倒的多数の賛成で可決した。

 この決定は2月2日、欧州議会法務委員会の白熱した会合で下された。法制化の手続きをやり直して、純粋なソフトへの特許認可に対するセーフガードを設けるよう議員に働きかけていたソフトウェア特許反対派にとっては勝利と言える。

 「100%満足している」と話すのは、Foundation for a Free Information Infrastructure(FFII)の代表エリック・ジョゼフソン氏。「EU(欧州連合)は壊れた知財システムの立て直しを主導し、中小企業に法の確実性をもたらすことができると思う」

 しかし今回の決定は、イノベーターを保護する新たなルールが必要だと考える議員にも歓迎されている。

 (ソフトウェア特許)法案に対する最初の意見書を書いた英労働党の欧州議会議員アーリーン・マッカーシー氏は、「現状ではこれが最善の解決策だ」と語る。

 法制化手続きのやり直しにより、この法案に関して適切な相談がなかったと考えているポーランドなどの国家の意見を取り入れられるようになる。ポーランド政府は昨年5月にEUが承認した法案に2度反対し、法制化を阻止する際に重要な役割を果たした(1月25日の記事参照)

 またポーランドの議員は、欧州議会での法制化プロセスのやり直しに向けても尽力した。

 欧州議会は賛成19、反対2、棄権1で、欧州委員会にソフトウェア特許法案(コンピュータを用いた発明の特許取得に関する指令)の取り下げ要求を決定した。

 欧州委員会が今選べる選択肢は幅広い。欧州議会の要求に従い、新しい法案を提出しないという選択も可能だ。そうなれば、新たに法制化が行われることはなく、ソフトウェアに特許を認めるかどうかは各国の特許庁が決定することになる。

 あるいは、法案に変更を加えるかどうか決定する前に、閣僚会議が採用する政策を欧州議会が改正する次の機会に、通常の法制化プロセスが行われるまで待つこともできる。しかし、現在の法案の内容に対する政治的な反対が高まっていることを考えると、これはありそうにない。

 最も可能性の高いシナリオは、少なくとも4〜6カ月手続きを遅らせるというものだ。これにより、ソフトウェア特許法案の影響を評価する時間ができるとマッカーシー氏。

 同氏は欧州委員会に対し、この法案の影響を評価し、賛成派・反対派のロビイストが主張するほどのダメージをIT業界の各分野にもたらすかどうかを見極めるよう求めている。「皆がこの法案の見直しを求めた」と同氏。

 FFIIのジョゼフソン氏は、同団体は欧州委員会がこの法案の影響を評価し、「われわれが望まない」タイプの特許を特定するのを喜んで手伝うと話している。

 マッカーシー氏は、高いレベルの特許保護を求めてきた大手IT企業は、法制化が遅れても失望しないだろうとしている。

 「私なら、ろくでもない規制ができるくらいならない方が業界にとっていいと思うだろう」と同氏は語り、欧州議会が以前に可決したバージョンの法案では、特許保護の資格を得られないほど基準を高く設定しすぎていたとコメントした。

 この問題は、Microsoftのビル・ゲイツ会長が2日に欧州議会議員と技術および世界的な問題に関して話し合った際にも話題に上った。Microsoftが高レベルの特許保護を求めるロビー団体の一員であることから、ゲイツ氏はこの問題に関するスタンスを問われた。同氏は、Microsoftは既に米国特許の下で活動しているため、これは欧州の問題であると答えたと報じられている。

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