NECと松下電器産業は7月27日、携帯電話端末の開発を行う合弁会社を10月上旬に設立することで合意した。多機能化で開発負担が重くなる一方のソフトウェアから共通化し、デザインなど差別化要素に注力できるようにするのがねらい。
調達や製造販売、両社のブランドはそのまま従来通り展開する。松下の大坪文雄社長は「効率化でリソースを差別化に振り向けられる。両社のブランドの端末を次世代にふさわしいものにするのが目的だ」と語り、NECの矢野薫社長は「1社では端末開発が難しくなってきている。それぞれの“らしさ”を生み出し、競争して互いにトップを奪い合う『競争と協調』の関係だ」と話した。
また両社と米Texas Instruments(TI)ら5社で、携帯電話用通信プラットフォーム半導体を共同開発する合弁会社も設立する。W-CDMA&GSMなど、2.5G〜3.5Gのデュアルバンド端末市場をターゲットに、2008年に世界W-CDMAプラットフォーム外販市場のシェア20%以上を目指す。
端末開発合弁会社は横浜市に設立し、社名は未定。資本金は1億円は両社で折半出資する。社長はNEC、副社長はパナソニックモバイルコミュニケーションズ(PMC)から出向する予定で、従業員約140人体制でスタートする。
NECとPMCは、Linuxを採用した端末開発で協業してきた(関連記事参照)。新会社はさらに踏み込み、ソフト・ハードで共通化部分を拡大する。
新会社は、NEC、PMCの両社から共通プラットフォームの開発を受託する形で開発を担当。Linuxをベースとし、2007年度にまずミドルウェアを中心に一部モデルから展開する。2008年度にはソフトウェアに加え、松下とNECエレクトロニクスの技術を融合したアプリケーションプロセッサなど、ハード部分にも広げた共通化を進める計画だ。
携帯電話端末は、マルチメディア化やインターネット対応などの多機能化が進み、1機種あたり100億円以上にのぼる開発費の大部分をソフトウェア関連が占めるようになってきている。両社でコストを負担し合うことでリソースの余裕を作り、デジタル家電との連携機能やデザインといった差別化要素に振り向け、両社の収益力と製品力を高めていくのが合弁のねらいだ。
NECの矢野社長は「パナソニックは家電、NECにはPCからきたテイストがあり、違いは出せる」と話す。その上で市場では切磋琢磨し合う「競争と協調の関係」が、現時点で描く両社の将来だ。
MM総研の調べでは、2005年度(2005年4月〜2006年3月)の両社の国内市場シェアは、PMCが16.1%で2位、NECが15.8%で3位。NECは長年の首位から転落し、代わって初めてシャープ(16.3%)がトップに立った。国内端末市場をけん引してきたNECとPMCだが、近年は不振に陥っている。
NECが同日発表した2006年4〜6月期決算によると、携帯電話端末事業の同期の出荷台数は170万台になり、前年同期比で3割減に落ち込んだ。採算性を重視して海外で出荷を絞り込んだ上、国内も不振で2割減。売上高は前年同期比から約3割減の791億円にとどまり、80億円の営業赤字だった。
構造改革を進めているPMC(関連記事参照)は、4〜6月期の営業利益は10億円と黒字に転換したものの、海外事業縮小が影響し、売上高は前年同期比2割減の1050億円にとどまった(関連記事参照)。
両社とも海外で苦戦したのが不振の一因だが、巻き返しの機会はうかがっている。「海外は縮小したが、『4G』では考えたい。いまはその準備の時だ」──松下は再三、PMCの将来戦略をこう説明してきた。
端末開発合弁会社は「まず国内に足場」(松下の大坪社長)を築き、国内市場での収益力の回復と拡大を図っていくのが目的だ。だが「次世代に対応する基盤技術を、世界に先駆けて確立する」(同)という戦略的意味もある。
両社とTIら5社で設立する「アドコアテック」(関連記事参照)も世界戦略を担う。世界的には3G(W-CDMA)はようやく本格普及期に入った段階。これから来る3.5G(HSDPA)への備えに加え、2.5G(GSM/GPRS)とのデュアルモード化が欠かせない。
GSMに実績があるTIを迎え、通信プラットフォーム半導体をグローバルにライセンス販売するのが新会社の役割だ。NECの矢野社長は「TIとの連合で、世界に打って出られるチップを作れる」と期待し、日本TIの山崎俊行社長も「シェア20%の目標を達成できるよう、世界市場に向かってまい進したい」と話した。
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