10月2日に開幕したエレクトロニクス・IT関連の総合見本市「CEATEC JAPAN 2007」(千葉・幕張メッセ)の目玉展示は“薄くなった”薄型テレビだ。シャープや日立製作所、日本ビクターは液晶で、ソニーは有機ELで、これまでにない薄さをアピールする。
薄型テレビ技術競争の主戦場はこれまで、画面の大型化だった。液晶はシャープが1月に108V型を、プラズマは松下電器産業が103V型を7月に発表するなど、1インチ単位の競争が繰り広げられてきた。
だが最大サイズが100V型を超えた昨年ごろから、大型化は従来ほどのインパクトを持たなくなってきた。加えて、大きすぎるテレビは一般家庭に置けるものではなく、単なる技術アピールにしかならないという面もある。
そこで各社が次の技術ターゲットに据えたのが薄型化だ。「これまでにない薄いテレビ」なら、大型化競争に飽きた消費者に向けて「パネルの薄さ○ミリ」などという新鮮な数値を提示できる上、壁掛けなど新しい視聴スタイルも提案できる。
液晶陣営では、最薄部が20ミリの52V型試作品を発表したシャープを追いかけるように、日立が同19ミリの32V型試作機を参考展示。2009年の量産に向けて開発を進めている。専用ブースには長い列ができており、注目の高さがうかがえた。
日本ビクターも最薄部37ミリの42V型液晶テレビを発表。こちらは商品化が決まっており、来春から欧州で、次いで日本国内でも販売する予定だ。
ソニーの11V型有機ELテレビ「XEL-1」はパネルが3ミリと極薄。画質の高さも抜きん出ており、画面に顔を近づけてじっと見つめる人も多かった。有機ELは大型化が課題とされてきたが、27V型も参考出展して大型化の可能性を示していた。
シャープのテレビ展示ゾーンのテーマは「Dream of Wall TV」。薄さ20ミリの52V型だけでなく108V型液晶テレビまで「壁掛け」として展示した。「108V型テレビはまるで大きな窓。朝の陽の光が差し込みます」――108V型を紹介するコンパニオンは、テレビにかかった薄いスクリーンを巻き上げながら、朝日の映像を見せていた。
薄さ20ミリの製品に関しては、壁に掛けてまるで絵画のようにテレビを“鑑賞”したり、薄い台にディスプレイをまるごと収納できる「ポップアップ」機構にしたり――薄型で可能になるリビングの未来図を提示している。
ただ、CEATECの展示で薄さのメリットを明確に提示していたのはシャープのみで、日立、ビクター、ソニーは、一部を除いて奥行きのあるスタンド付き。横から見て「薄いなぁ」と実感できる以外は、薄さの意義が見えにくい。
各社がこれだけ薄型化に力を入れていることを見るとテレビの薄型化は今後も進んでいくとみられ、薄型化競争に参戦していないプラズマ陣営も今後、薄型化にかじを切らざるを得ないかもしれない。
だが、単純に「他社より1ミリ薄い」を競うなら、1インチの大きさを競ってきた大型化競争と変わらない。テレビが薄くなることでどんな幸せがもたらされるのかを示すことができなければ、単なるスペック競争に終わってしまう危険性もありそうだ。
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