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かなわぬ夢をあきらめさせるには? 米大学が説得法を研究

» 2009年08月27日 07時00分 公開
[ITmedia]

 かなわないキャリアを夢見ている人を説得して、あきらめさせるにはどうすればいいのか。オハイオ州立大学がこのような研究結果を発表した。

 研究の結果、このような夢をあきらめさせるには、単にスキルや成績の不足を指摘するだけでは不十分で、「目標を追い続けて失敗したときにどんなひどいことになるか」をはっきりと示す必要があることが分かったと、同校の研究者は述べている。

 この研究は、経営学と心理学を学んでいる同校の学生を被験者として行われた。被験者らは「経営心理学者として高給のコンサルティング職に就く」ための資格を取れると称する架空のプログラムの説明会に参加した。

 被験者は4つのグループに分けられ、このプログラムについての情報シートを渡された。統制群のシートには、プログラムに参加するためのGPA(学業成績)要件が書かれていなかった。残る3つのグループの被験者は、本人の成績よりも10%高いGPA要件が書かれたシートを受け取った。

 3つの実験群のうち1つ目のグループでは、キャリアアドバイザー(実際は研究者)が学生に対し、単にGPAが要件に満たないことを指摘する。2つ目のグループでは、アドバイザーが「無理だろうけど、審査が甘いかもしれないので、興味があったら申請してみたら」と言う。最後のグループでは、成績が足りないことを指摘した上で、「万が一プログラムへの参加が認められても、要求水準が高いため苦労するだろう。どうにか卒業できても仕事に就ける見込みがない」と脅しをかけた。

 統制群と1つ目のグループの被験者は、経営心理学コンサルタントの夢をあきらめなかった。キャリアアドバイザーとの面談のあとでアンケートを取ったところ、自分の能力に対する自信の喪失は見られず、経営心理学の資格取得への意欲も高かった。

 最も強い脅しを受けた3番目のグループの被験者は、アドバイザーとの面談後にかなりの自信喪失が見られ、資格取得への期待や意欲も低かった。

 この研究に参加したオハイオ州立大学の心理学準教授パトリック・キャロル氏は、3番目のグループの学生が資格取得への興味を失ったのには、不安が大きな役割を果たしたと指摘する。失敗した場合にどうなるかをはっきりと示されたことで学生の不安が高まり、夢をあきらめて、資格が取れないだろうという事実を受け入れたことで不安が低下したという。

 キャロル氏は「ほとんどの人は簡単には夢をあきらめない。失敗したらどうなるかをはっきりと見せることが必要だ」とし、特に学生が就職活動の準備をする際に、この研究結果は重要だと述べている。「教師は学生を最も現実的な選択肢に導こうとしている。夢を追いかけるよう励ましたいが、学生たちに自分の能力や才能に関して誤った期待を持たせることはしたくない」

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