しかしこの2年間でAppleのiPhoneは、高いブランド力を備えた魅力的なコンセプトという段階から、企業とコンシューマーの両方に訴求する本格的なスマートフォンへと進化した。コピー&ペーストもテザリングも可能になった。Exchangeのサポートも実現された。とりわけ素晴らしいのは、ビデオ録画が可能になったことと、同社のApp Storeからダウンロードできる何万本ものネイティブアプリケーションを利用できるようになったことだ。ほとんどの人々を引き付ける非常に魅力的な携帯電話になったのだ。
しかし、iPhoneは相変わらずAT&Tに縛りつけられている。このため、市場の大部分は、たとえiPhoneに移行したくても移行できないのが実情だ。例えば、Verizon Wirelessと長期契約を結んでいる企業ユーザーは、契約を打ち切ってiPhoneに移行するというわけにはいかない。お金を無駄にすることになるからだ。AT&Tと契約して悪夢のような経験をしたコンシューマーや、現在のキャリアに満足しているコンシューマーも、iPhoneに乗り換えたいとは思わないだろう。iPhoneに移行したくてもできないというユーザーは、それぞれの理由を抱えているのだ。これはAppleの最大の問題だ。
AppleがAT&Tとの独占契約から複数のキャリアとの柔軟な関係へと移行することにより、米国の何百万人ものユーザーがiPhoneを購入するのを妨げている、この大問題が取り除かれるのだ。
もちろん、iPhoneに切り替える必要性がないのでBlackBerryにとどまるというユーザーもいるだろうが、それよりもはるかに多くのユーザーがiPhoneに移行することは間違いない。彼らはキャリアのショップの前に行列をつくるだろう。オンラインでiPhoneをキャリアに注文する人もいるだろう。BlackBerryの支配圏から逃れたいと考えている企業では、キャリアの担当者に電話してiPhoneを注文するだろう。そいういったことになれば、市場の様相が大きく変わる可能性がある。スマートフォン市場でAppleの最大のライバルであるRIMにとっては実に重大な問題だ。
Appleがフランスでの戦略に従うことになれば、同社のスマートフォンは、それを採用するすべてのキャリアで利用可能になる。大手キャリアがiPhoneの分け前を欲しがらないとは思えない。ショップの棚に並んでいるBlackBerryデバイスは、iPhoneの隣で時代遅れに見えるようになるだろう。
ユーザーがスマートフォンを選ぶためにキャリアのショップに行ったとき、彼らがiPhoneと比較するのは、メカニカルキーボードを採用し、ブラウザ環境が貧弱で、タッチスクリーンを備えていない(Verizon Wirelessのユーザーを除く)BlackBerryだ。iPhoneを前にすれば、新しいBlackBerry Tourでさえも古臭く見える。コンシューマーがT-MobileのショップでiPhoneとCurveを見比べたとき、どんなふうに思うだろうか。この状況はRIMにとって悪夢になりそうだ。
スマートフォン市場での今後の展開を予想すれば、Appleの次の一手は複数とのキャリアとの関係構築であるという事実をRIMはそろそろ受け入れる必要がある。そうなった場合、同社のスマートフォンは時代遅れに見えるだろう。これまでiPhoneを入手できなかったためにBlackBerryにとどまっていたユーザーは、改めて選択肢を検討するだろう。そして最後に残された問題、すなわちキャリアの選択肢という問題に対処するのは、iPhoneをめぐるほかのすべての問題を解決してきたAppleにほかならない。
RIMはそのとき、どう対応するのか早急に決める必要があるだろう。特定のキャリアに縛られないというアドバンテージを失う同社は、現行モデルをアップグレードする必要がある。ソフトウェアを改良し、タッチスクリーンを搭載した機種を増やすとともに、iPhoneと同じ土俵で競争できるブラウザを、最近買収したTorch Mobileのチームと共同で開発する必要もあるだろう。
それと同時に、RIMはより多くのアプリケーションを自社のApp Worldマーケットプレイスで提供する取り組みに注力しなければならない。こういった改善を実行しなければ、同社はAppleの猛攻撃を前に深刻な事態に陥る可能性がある。しかしこれらの改善を果たせば、同社はAppleのスマートフォンと互角に渡り合う立場に立てるかもしれない。Appleが複数のキャリアにiPhoneを提供するという前提に立てば、RIMの戦略は自ずと明らかになるのではないだろうか。
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