わたしは今日のデジタルライフスタイルがとても気に入っている。その恩恵を特に強く感じるのは外出時、つまり旅行に出掛けたときや市内を散策したりしているときだ。学生時代に買い集めたレコードの数とは比べものにならないほど膨大な音楽のコレクションを携えて散歩し、いつでも好きなときに読める数冊の本をポケットに忍ばせて、面白いものを見たらその場で写真やビデオを撮影できるというのは実に素晴らしいことだ。
読者の皆さんは、わたしがどんな装備で外出しているとお考えだろうか。MP3プレーヤー、電子ブックリーダー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラを携えて歩き回っていると思っているのだろうか。
そうではない。わたしが持ち歩くのは1つのデバイスだけだ。スマートフォンのBlackBerryだ。これ1台で音楽を聴き、本を読み、写真やビデオを撮影できるのだ。もちろん電話もかけられる。ゲームをする、連絡先を管理するなど、ほかにもいろんな機能が使える。
実をいうと、わたしはすてきなMP3プレーヤー、高性能コンパクトデジカメ、デジタルビデオカメラのFlipを持っているのだ。電子ブックリーダーは持っていないが、何種類か試す機会はあった。だが外出時にこれらのデバイスを持って出なくなり、1台の多機能デバイスだけで済ませることが次第に多くなってきた。
これらの単機能デバイスはいずれも素晴らしい製品であり、どんな場合もほぼ例外なくわたしのスマートフォンの機能よりも優れている。しかし、どんな場合もわたしのスマートフォンで十分に間に合うというのも真実だ。
iPodには及ばないが、このスマートフォンに約20時間の音楽を入れて持ち歩くことができ、それで十分に音楽を楽しめる。Kindleには比べものにならないにせよ、追加した電子ブック閲覧ソフトウェアを利用すれば、「Moby Dick」(メルヴィル著、邦題:白鯨)や「Great Expectations」(チャールズ・ディケンズ著、邦題:大いなる遺産)など20冊以上の本をその中に入れて読むことができる(確かに「次ページ」ボタンを何千回もクリックしなくてはならないが、特に苦にはならない)。
一般に専用デバイスは品質面で多機能デバイスよりも優れているが、コストと利便性では太刀打ちできない。そして大抵の場合、新たにガジェットを買いたくないし、ガジェットをもう1台持ち歩くのはいやだという気持ちが、新しい専用デバイスを購入するよりも、手持ちの多機能デバイスを活用するという手段を人々に選ばせているのだ。
そしてこの状況は基本的に、いずれ専用デバイスが消滅するか、あるいはニッチな高級品としてほそぼそと生き残るという結果につながるだろう。
信じられないだろうか。しかし歴史を振り返っていただきたい。Palm Pilotをはじめとする大型電子手帳はどこに行ったのだろうか。ほんのわずかな間ではあったが、それらは多くのビジネスユーザーにとって必須のアイテムだった。今日では、これらのデバイスの機能は、シンプルなスマートフォンでも基本機能として備えている。
MP3プレーヤーでも同じことが起きているのが分かる。例の小さなイヤフォンをあらゆる場所で見掛けたのは、それほど昔のことではない。しかし今では、携帯電話で音楽を聴いている人がほとんどだ。
Appleもこの状況を認識しているようだ。同社はさまざまな形でiPodを重視しない考えを示している(iPod関連の発表が最後にビッグニュースになったのは、いつのことだったろうか)。そしてわたしの同僚のニック・カラコウスキーが指摘しているように、AppleはiPodシリーズを専用の音楽プレーヤーから、多機能型エンターテインメントデバイスという側面が強い製品に移行させようとしている。
電子ブックリーダーは高額商品としてのライフスパンがさらに短く、すぐにニッチなデバイスになりそうだ。MP3プレーヤーよりも多くのマイナス要素を抱えているからだ。
確かに、Kindleのようなデバイスで本を読むのは心地よい体験だ。しかし制約も少なくない。
既に述べたように、デバイスの価格とサイズという問題がある(それほど重大な制約ではないが)。しかし多くの専用電子ブックリーダーは閉鎖的なエコシステムを形成しており、ほかのソースの電子ブックを利用するのは難しい。これとは対照的に、わたしが使ったことのあるスマートフォン用リーダーアプリケーションの多くでは、Project Gutenbergからダウンロードするパブリックドメインの作品でも個人のPDF作品でも、非常に簡単に取り込むことができた。
多機能型デバイスに組み込むのが難しい機能を持った専用デバイスの中には、生き残るものもあるだろう。また、高品質なデバイスの需要は今後もずっと存在する。例えば、シンプルなコンパクトデジカメはいずれ消え去るとわたしは予想しているが、プロ品質のハイエンドデジタルカメラの市場がなくなることはないだろう。
こういった例外的なケースはあるものの、ほとんどの専用デバイスは、多機能デバイスの1機能となって消え去る運命にある。多機能デバイスはこれらの機能を「十分に間に合う」程度のレベルで実行できるだけかもしれないが、多くの人々にとっては、十分に間に合うだけで十分なのだ。
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