ラスベガスで開催されている2010 International CESで、日本発のiPhone用周辺機器が発表された。iPhoneをドック接続する「Fingerist」。iPhoneで路上ライブをするためのデバイスだ。
開発したのは、iPodやiPhoneの周辺機器メーカーであるトリニティとバード電子。iPodやiPhoneの情報サイトであるiPod Styleも協力している。今回は、3者の共同ブランド「エベンノ」から、CESに出展しているトリニティのブースで発表された。
この「Fingerist」、スタイルはまるでギターだが、ストラトキャスターやレスポールなど、特定のモデルに似ているわけではない。ただ、iPhoneやiPod touchをドックにつなげ、ギターならばネックに相当する部分に収納する独特のスタイル。ブリッジに相当するところにはスピーカーがある。
単三形乾電池×3本で2時間駆動するスピーカー(3ワット)を内蔵しており、人前での演奏には十分。さらに大音量が必要な場合にはライン出力が可能なので、そこからアンプに通せば、普通のギターのように鳴らすことも可能だ。
ある意味、アンプとスピーカーを内蔵した、フェルナンデスの人気小型ギター「ZO-3」に近いものがある。ピンが2カ所用意され、専用のギターストラップも付属する。標準的なギターストラップも使えるから個性を出すこともできる。
奏法上のこだわりも追求している。ギターと同じスタイルのボリュームコントロールがあるため、「バイオリン奏法」もやろうと思えばできる。
このように、iPhoneをギター化するためのミュージックデバイスなのだが、なぜこういうものが必要なのか説明しよう。
いまテレビ放映中のソフトバンクのCMでは、SMAPのメンバーがiPhoneアプリを披露している。使っているアプリはギターのコードをiPhoneで再現するGuitarToolkit(1200円)だ。
iPhoneにはほかにもさまざまなギターアプリがある。例えばPocket Guitar。日本人によるiPhone成功者の最初の例で、笠谷真也氏が個人でプログラムし、99セント(日本では115円)でApp Storeで販売したこのアプリは昨年3月までに50万本売れた(ニッポンのiPhoneアプリヒットメーカーたちに続け!)。
YouTubeでは、このアプリや、競合するiShredなど、iPhoneを楽器として使った動画が無数に投稿されている。iPhoneアプリならば重いギターを持ち歩かずにすむので、飲み会などでちょっと披露したりすることもできる。「キムタクみたいなこと、俺もできるぜ」みたいな自慢もできるわけだ。
ただ、限界もある。iPhoneのスピーカー音量では1、2人に聴かせるのがせいぜい。ガヤガヤしているところだとよく聴こえない。しかもiPhoneだけ持って操作していると何をやっているのか意味不明。演奏しているほうも、見ているほうもフラストレーションがたまる。「もっと多くの人を前に見栄えよく披露したい!」
そんなiPhoneギタリストの要望がバード電子、トリニティへと伝わり、企画がスタート。数カ月にわたる開発期間を経て、CESでの発表となった。企画段階では競合がすぐに出てくることを危惧し、内密に開発が進められていたが、無事に一番乗りできたようだ。
この製品の紹介ページに「Fingerist」が開発された経緯が書かれている。
あるとき、東京・新宿のジンギスカン屋でiPhoneが大好きな人たちが集まっていた。そこで素晴らしいギターアプリの演奏を披露している男がいた。
そして、「ギターアンプが欲しい」とiPod/iPhone用スピーカーのデザインと設計に定評のあるバード電子に要望を語った。
その一言がiPod/iPhoneアクセサリー関連メディアとして活躍するiPod Style、そしてiPod/iPhoneアクセサリーブランド「Simplism」を擁するトリニティへとつながった。
iPhone/iPod touchをミュージシャンのスタイルにするGuitaristならぬFingeristは、このEVENNOプロジェクトのはじめの一歩であり、ありそうでなかった世界で最初の製品である。
実は、ジンギスカン屋でギターアプリを演奏していた男というのは筆者なのだ。飲み会でのアイデアがラスベガスまでデビューしたことに感激中だ。1万4800円(税込み)。iPhoneでひと花咲かせたい人は買ってほしい。
iPhoneでギターをやれば、本物のギターと違って指が痛くならない。ぜんぜん弾けなくても、カラオケJOYSOUNDアプリを起動して弾くふりすれば、「iPhone流し」になれるし。
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