サイバーエージェントが運営する仮想空間サービス「アメーバピグ」の英語版「AmebaPico」が順調にユーザーを増やしている。今年3月にスタートし、すでに250万人を突破。年内に300万人を超える見込みという。拡大スピードでは、495万会員のピグをしのぐ勢いだ。
Facebookや独自サイトで提供。ほとんどはFacebookからで、米国、インドネシア、フィリピンのユーザーが多く、ぞれぞれ2割ずつを占める。
アイテム課金制で、ARPU(ユーザー1人当たりの月間売上高)はピグが1450円に対し、Picoは800〜1000円程度。売り上げの拡大が課題になっており、「まだ大成功という感じではない」と同社執行役員の長瀬慶重さんは気を引き締める。
Picoの基本機能はピグと同じ。2頭身アバターを作って、ほかのユーザーとチャットし、コミュニケーションを楽しむ。仮想通貨でアバターアイテムを購入したり、ゲームをプレイできる。
自分の部屋を拡張したり、掲示板でイベント告知するといったピグにはない独自機能も。部屋にほかのユーザーを呼んで盛り上がれるようにと用意したもので、ホームパーティーが盛んな海外文化を意識した。
英語、日本語、タイ語、中国語など、特定の言語でコミュニケーションする専用エリアや、日本のビジュアル系バンド「Alice Nine」をテーマにしたエリアも用意している。
ユーザー層はピグ、Picoとも女性が7割を占め、20〜30代が多い傾向。だが人気のアバターアイテムはかなり異なる。例えば、ピグは優しい色合いのアイテムが、Picoではヴィヴィッドな色が好評。ビジュアル系やゴスロリなど“クールジャパン”なアイテムや、パンク、ロックなアイテムが好まれるのもPicoの特徴だ。
以前は両サービスを1つの開発チームが手掛けていたが、ローカライズを徹底するため、今はチームを分け独自にアイテムや機能の開発を進めている。社内の同じフロアーに、ピグのチーム(約60人)とPicoのチーム(約20人)が隣り合って座っているが、「お互いに引っ張られない」(長瀬マネージャー)関係という。
11月に出したピグのAndroidアプリは、公開されたばかりのAndroid版Adobe AIRの活用をアドビシステムズから提案され、エンジニアとデザイナーの2人が自発的に作ったサービス。“現場発”で開発が進む雰囲気もあるようだ。
Picoは年内に300万会員を突破する見込み。ピグは昨年2月のスタートから300万会員を突破するまで約1年2カ月かかっており、Picoの拡大スピードはピグを上回っている。海外文化に合わせたサービスや機能を用意したことが人気を支えていると、長瀬さんは見る。
Facebookのユーザーは世界で5億人以上と、日本のネット人口をはるかに超える規模。人気のアプリは口コミで拡大する傾向もあるが、「いいアプリを作っても流行る時代じゃない」とも。Picoは、Facebookに広告を出したり、9月から米国のゲームポータル「Mochi Media」でも提供したりして、集客につなげてきた。「重要なのはマーケティング」(長瀬さん)だ。
PicoのARPUがピグを下回るのは、ユーザーの多いインドネシアやフィリピンで単価が低いことが影響しているという。海外で決済インフラや課金文化が浸透すれば、「ピグの課金単価を越えるポテンシャルはある」(同社広報担当の鳥羽綾子さん)と期待を寄せている。
Picoを「事業としてきちっとインパクトのあるものにしていきたい」と長瀬さんは意気込む。ユーザーがPicoにアクセスする頻度を高められるよう、課金の対象となるゲームの種類を今後増やしていく予定だ。
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