大規模企業と比べて中堅企業では予算や人材などの経営リソースが限られており、基幹系システムをはじめとするITの導入、整備が進んでいない企業も散見される。その一方で、少子高齢化などの影響で日本市場が縮小傾向にある中、多くの中堅企業が海外進出を図っており、現地でのサプライチェーンシステムの構築や、本社システムとの連携をどうするかなどに対して頭を悩ませている。
そうした中、ITベンダの多くが中堅企業を重視し、さまざまな施策を打ち出している。IBMもその1社だ。同社では、社員1000人以下で、かつ多国籍企業の子会社ではない、メインフレームを利用していない企業を中堅企業と定義しており、この市場は2011年には1630億ドルの規模になると見ている。
同社が2010年10月〜12月の期間で、世界28カ国の中堅企業2112社(日本からは100社)を対象に実施した調査によると、大多数の企業が前回調査の2009年と比べて2011年はIT予算が横ばい、もしくは増えるとしている。日本の中堅企業においても、29%がIT予算を増やすと回答している。
日本の中堅企業の特徴について、米IBMでミッドマーケット ゼネラルマネジャーを務めるアンドリュー・モンショウ氏は、「国内の信頼するパートナー企業からITサービスやソリューションを調達する傾向にある」と話す。そこでIBMは、企業や地域に根付いたさまざまなビジネスパートナーと連携することで、中堅企業のビジネスを理解し、彼らにとって価値のあるサービスを提供していく。
具体的にIBMが注力するのがクラウドサービスだ。先述した調査において、日本の中堅企業がビジネス上で最も優先すべき事項はコスト削減および運用効率の向上だという。「それを実現するための手段がクラウドである」とモンショウ氏は強調する。自社にITシステムを持たないことで、保守・運用コストに加えて、システム導入時の初期コストも抑制できる。
さらに、企業のグローバル展開においてもシステムのクラウド化は効力を発揮する。海外進出による拠点の増加に伴い、システムは分散し、バックオフィスのIT業務が複雑化する。しかしながら、中堅企業の多くは専任のIT部門スタッフがほとんどいないため、適切に対応できないのが現状である。また、進出先の拠点で一からシステムを構築しようとしても、コストや時間がかかり、ビジネスに俊敏性を欠いてしまう。
「あらゆる業種の日本企業がグローバルで事業展開しようとしているが、柔軟性を持ったシステムを迅速に構築しないといけない。そこでクラウドを活用して、日本で利用するシステムをすぐに海外拠点に展開していくことが重要だ」(モンショウ氏)
実際、IBMの調査によると、56%の中堅企業がクラウドの導入を計画、あるいは実施中であるという。
このように、自らIT上の課題や優先項目を理解する企業がある一方で、ITの必要性は感じながらも何をしてよいか分からないという中堅企業も少なくない。IBMではそうした企業を支援するために、中堅企業向けのIT投資アセスメントツールを無償提供している。
内容は、先に挙げたグローバル調査のデータを基にしており、ツールを利用する企業はいくつかの質問に答えることで、「戦略分野」「ビジネス優先項目」「新規テクノロジーの導入姿勢」「IT優先項目」「IT導入における懸念事項」「IT予算の増減予想」の6項目について診断を受けることができる。その結果は、全世界の同業種中堅企業などと簡単に比較することが可能だ。IT投資アセスメントツールは既に米国では提供されており、このたび日本でもリリースを開始した。
「企業はさまざまな情報を集めて、自分たちの戦略が正しいかを常に検証することが重要だが、中堅企業は自らが得られる情報に限りがある。IBMが世界中で収集したデータを提供し、そうした企業のビジネスを積極的に支えていく」(モンショウ氏)
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