ITmedia NEWS >
くらテク マネー

退職金離婚に陥らないための投資経験値渋谷豊の投資の教室(3/4 ページ)

» 2018年12月13日 09時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

渋谷: ところがなぜか不思議なことに、いままでいい感じだったのに、投資した後にはいきなり下落したりするわけですよ。予想外のことが起きて。そして2000万が1000万になってしまい、奥さんに「何やってんのよ! 今まで30年、40年も頑張ってきた退職金を半分にして!」と怒られるわけです。「いやそんなリスクがあるって知らなかったんだよ」と答えるわけですが、「これを機に別れましょう! 退職金は半分こね」と奥さんに1000万円渡すことになる。結果、旦那さんはゼロ。こんな退職金にまつわる離婚が何年か前に話題になりました。

 まとまったお金が手に入って初めて投資するものだから、投資によっては損が出ることすら分かっていない。だから私は、若い人が、長期的に投資に取り組んでもらえれば、相続とか退職金とか大きなお金をもらった時にすごくいい向き合い方ができると思うのです。大金が将来入っても浮かれることなく過去と同じようにしゅくしゅくとやるだけなんです。急にやろうとするから事故みたいなことに遭うのです。

サイトウ: 小さい額から始めて、経験値を高めていかなければいけないわけですね。

渋谷: そうです。長期投資というのは当然、資産を増やすことが目的なのですが、それと一緒に投資と伴走することによって、自分の経験値も上がっていくということが、無形資産知識として大事だと思います。だから少しの額でもいいからやってみませんか、と都度あるごとにお伝えしています。

 とにかく一回経験してください。10万円でいいからやってみて、1万円上がったらこんなに気持ちが高揚すること、そして1万円下がったらこれだけ気分が落ち込むことを経験してもらいたいですね。そうすると、これが実際に100万円、1000万円と金額が大きくなった時にどんな気持ちになるのかというのが想像できます。そうすれば、退職金など大きなお金が入った時に事故が起こりにくいんですよ。

 株をやったことのある人は分かると思いますが、100万円投資して10万円上がったら本当にゆるむんです、財布と気持ちが。人間ってそういうものなんです。居酒屋でもう1品多く頼もうかな、とか。こういう経験を積み重ねると、舞い上がった気持ちの落ち着かせ方も覚えていきます。

 私も最初に投資したのは20代前半の時なんですが、最初はとにかく浮かれました。株が上がったので、飲み会でちょっと多めに出したり、おごったりとか。でもそれは翌日下がることも当然あるんです。

 おかげで今はもうかっても損しても、浮かれもへこみもしません。淡々と事実を見る。これが僕の20年間の財産だと思ってます。言われてもそんなもんかねぇと思うかもしれませんが、自分で経験するとよく分かります。NISAでもiDeCoもジュニアNISAでもいいです。せっかく国が投資を支援しているという環境があるので、それを利用してはいかがでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.