ITmedia NEWS > セキュリティ >
セキュリティ・ホットトピックス

「笑い男」事件は実現可能か 「攻殻機動隊 S.A.C.」好きの官僚が解説アニメに潜むサイバー攻撃(3/12 ページ)

» 2019年05月24日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: おそらく可能です。現在でも、メジャーなデジタルカメラメーカーが世界で数社に集約され、撮像素子である高品質なCMOS撮像素子に至ってはさらにメーカー数が少ないという状況を見ると、未来では義体化(サイボーグ化)した人の視覚デバイス、視覚デバイスではない場合は電脳内の視覚処理、そして監視カメラ、放送用カメラというくくり、それぞれを精査していけば、おそらく映像に関わる各パーツとも、高機能であればあるほど供給しているメーカーや製品の数が限られてくると思います。専門性が高くなると研究開発費などの投資能力で、先行者のアドバンテージに他社がついて行けなくなり、競争がなくなって寡占化するからです。その限られたパーツに関する脆弱性の穴をあらかじめストックしておけば、少ない攻撃パターンで一気に乗っ取れるということになります。あるいは更新サーバを攻撃してバックドアを仕込むアップデートを行う、サプライチェーン攻撃をしてもいいですし。

 そして義体化した目でも電脳でも、映像系にはおそらく「顔認識機能」がついていると思いますから、乗っ取った上で、顔認識をキーに自分の顔にマッチするものの顔認識枠をマークで上書きする訳です。簡単なのは顔を検知したら全てマークに変えることで、これはいまでも四角い顔認識枠を出していますから、置き換えればいいだけなので楽勝ですよね。

 録画されていたデータの場合は、そうですね、例えばSNSでは、とりあえず投稿した写真が後に、顔を分析されタグ付けされますよね。同様にそうした解析タスクが走っているでしょうから、それをハックすればいいわけです。

 それに、今でもShodanというインターネット上のIoT機器を検索できる検索エンジンがあります。そこでライブカメラや監視カメラのIPアドレスかそれに値するもの、機種、そして脆弱性などを調べたリストを作って、機種別にまとめておき、いざというときに自動で攻撃すれば同型の機器を一気に乗っ取ることができると思います。電脳化した人間は全てネットに接続しているでしょうから、自分の周辺の通信基地局単位なら数も限られ、さほど時間はかからないでしょう。また、一度に大量というわけではないものの、実際に監視カメラが乗っ取られ、画面上に載る文字が勝手に書き換えられた例がありましたよね。

K: じゃあ、じゃあ、逆に、簡単に乗っ取れるということは「笑い男」はすごくないということになるのではないですか?

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.