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「笑い男」事件は実現可能か 「攻殻機動隊 S.A.C.」好きの官僚が解説アニメに潜むサイバー攻撃(11/12 ページ)

» 2019年05月24日 08時00分 公開
[文月涼ITmedia]

F: 現代でもブラックハッカーを抑止する時、よく使われるのは、相手のことをそれこそ実名まで調べ上げて、それを突き付けることです。「お前のことを知っている。お前を見ているぞ」というわけです。身代金を要求した何者かは物理的な力を持っているかもしれないし、そうでないかもしれない。でもゲームコントロールするぐらいの物理的な力を持っている組織である可能性が高い。その不確定な不安の中で彼が取れた行動は、リアルの身分までは補足されていないことに賭けて、逃げることだったんじゃないですか。そしてそのまま6年、身を潜めた。目を閉じ耳を塞ぎ、おびえながら。

photo (C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

F: 私の仮定に基づけば、そんな彼が次に目にしたのは、何者かが「笑い男」をリサイクルして使おうとしている出来の悪い茶番劇です。彼が総監殺害予告に関わっていなかったら、次に彼が舞台に上がったのは、パーティの現場での、草薙少佐からのネット上の追跡のシーンです。彼女はすさまじい手際でした。たぶん、また震え上がったと思います。次は仲間がネットで草薙少佐に接触してるのを横目で見る。さらにトグサが、彼が潜伏していた厚生省の施設に職員として潜入してきた。相手が自分の根城にやってきたわけです。ただし単独で。前の草薙少佐の言動とトグサの様子を見ると、どうもそれほど怖い人ではなく、黒幕とは立場の異なるまっとうな警察官たちらしいと認識します。そこで彼は、利用できるかもしれない「物理的な力」を見つけるわけです。

 そして「目を閉じ耳を塞いでいる。いやそうならざるべきか」という言葉を、トグサが見つけた制御盤の蓋の裏に残し、意を決して再び行動を起こします。

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