カメラを製造したのは、イスラエル発のスタートアップ企業Pixellot。複数のレンズを搭載した専用カメラを競技場に設置しておくだけで、撮影したデータのクラウドへの転送、クローズアップすべきプレイの自動認識、シーンの切替、映像の加工・編集を行う。必要があれば試合の経過時間や両チームのスコアなど関連情報も付与してくれ、さらにダイジェスト映像の生成やCMの挿入、完成した映像の配信も可能だ。
前述したLedeAIの映像メディア版ともいえ、これまでマスメディアが扱う余力がなかったスポーツイベントを映像化できるメリットがある。実際にNFHS(米州立高校協会)がPixellotを導入したところ、それまでは年間20〜25件の試合映像を制作していたのが、1カ月当たり25件も制作できるようになったという。
これまで人間の特権とされていた創作の領域にAIが進出することに否定的な考えを示す人々もいる。しかし、現在主流のAI技術はあくまで既存のデータをベースにしたもので、人間の創作活動をAIが模倣しているに過ぎないともいえる。
むしろAIが創作活動をサポートすることで、人間の創造行為はより豊かになるかもしれない。美しい映像をつくれるが作曲は全くダメという人はJukedeckのAIに曲を書いてもらえば良い。壮大な風景が頭に浮かんだのに、それを絵として描くことができないという人は、GauGANを使って「頭の中のイメージを具体化する」という作業だけAIに手伝ってもらえば良いだろう。
日本全国で行われているサッカーの試合が、プロアマ問わずPixellotで映像化され、それが多くの人々の目に触れることで新たな天才プレーヤーの原石が見つかったり、サッカー界全体の底上げにつながったりするかもしれない。機械が人間と同じように創作活動をできるようになれば、人間にとっても多くの恩恵が生まれるはずだ。
経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。
世界で活躍するチャットbot 広がり続ける「自然言語処理」の可能性
AI時代のキャリア形成 仕事を奪われない人材になるには?
AI-OCR、医療、監視――広がる画像認識の可能性
AI時代のキャリア形成 仕事を奪われない人材になるには?
「リベンジポルノ」にもAI 新技術との正しい距離感は? 各国のAI政策と規制のいま
「AIのリスク」を理解してる? 世界でいま何が起こっているのか
それは人類にとって脅威なのか 「強いAI」について考える
「AIが仕事を奪う」への疑問 いま、“本当に怖がるべきこと”は
ディープラーニングは何ができる? エンジニア以外も知っておきたい注意点
エンジニア以外も「AIの仕組み」を学ぶべき理由 機械学習とディープラーニングの違いは?
文系でも分かる「機械学習」のススメ 教師あり/なし、強化学習を解説
「機械学習に50年の歴史あり」 人工知能が歩んできた道
あなたは人工知能が何なのか、人に説明できるだろうか?Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR