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AI記者、AI小説家、そしてAI作曲家も――創作する人工知能を支える技術よくわかる人工知能の基礎知識(5/5 ページ)

» 2019年10月07日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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 カメラを製造したのは、イスラエル発のスタートアップ企業Pixellot。複数のレンズを搭載した専用カメラを競技場に設置しておくだけで、撮影したデータのクラウドへの転送、クローズアップすべきプレイの自動認識、シーンの切替、映像の加工・編集を行う。必要があれば試合の経過時間や両チームのスコアなど関連情報も付与してくれ、さらにダイジェスト映像の生成やCMの挿入、完成した映像の配信も可能だ。

 前述したLedeAIの映像メディア版ともいえ、これまでマスメディアが扱う余力がなかったスポーツイベントを映像化できるメリットがある。実際にNFHS(米州立高校協会)がPixellotを導入したところ、それまでは年間20〜25件の試合映像を制作していたのが、1カ月当たり25件も制作できるようになったという。

人間の創作活動はどうなる?

 これまで人間の特権とされていた創作の領域にAIが進出することに否定的な考えを示す人々もいる。しかし、現在主流のAI技術はあくまで既存のデータをベースにしたもので、人間の創作活動をAIが模倣しているに過ぎないともいえる。

 むしろAIが創作活動をサポートすることで、人間の創造行為はより豊かになるかもしれない。美しい映像をつくれるが作曲は全くダメという人はJukedeckのAIに曲を書いてもらえば良い。壮大な風景が頭に浮かんだのに、それを絵として描くことができないという人は、GauGANを使って「頭の中のイメージを具体化する」という作業だけAIに手伝ってもらえば良いだろう。

 日本全国で行われているサッカーの試合が、プロアマ問わずPixellotで映像化され、それが多くの人々の目に触れることで新たな天才プレーヤーの原石が見つかったり、サッカー界全体の底上げにつながったりするかもしれない。機械が人間と同じように創作活動をできるようになれば、人間にとっても多くの恩恵が生まれるはずだ。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。


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