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AIは民主主義をアップデートするのか? 統治とテクノロジーの関係よくわかる人工知能の基礎知識(2/5 ページ)

» 2020年01月10日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

代替:人間の作業を置き換える

 代替は文字通り、これまで統治機構で働く人間が行っていたさまざまな作業を、機械によって自動化することを指す。

 その最も分かりやすい例の一つが、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用だ。日本の行政機関でも多くの導入事例が生まれている。

 例えば茨城県つくば市は、NTTデータ、クニエ、日本電子計算の3社と契約し、18年1月から4月にかけて日本の自治体としては初となるRPAの導入研究を行った。対象となったのは、事業所の新規登録業務や異動届受理通知業務など基幹系の6業務と、退勤データ集計など内部事務系の2業務。共同研究の結果、個人住民税・法人市民税に関する基幹系5業務の合計で約424時間かかっていた作業を、約88時間に減らせる(削減率約80%)可能性があることが分かったという。

 同じく代替の例として分かりやすいのが、AI-OCRの導入だ。これについても、つくば市が18年12月から19年3月にかけて効果検証を実施している。先述したRPA導入において、大量に保管している紙書類のデジタル化が壁となっていたため、AI-OCRが注目されたのだ。研究は町田市・横浜市・郡山市・市川市と共同で行われた。

 その結果、つくば市がサンプルに選んだ20種類の帳票について、文字単位での正読率が平均で93.41%に達した。中には100%を達成した帳票もあり、つくば市は本研究において「AI-OCRの技術としての有効性について確認できた」とし、実際の業務での活用についてさらなる検証を進めるとしている。

 こうしたAI活用は、確かにまだ完全に人間を置き換えるまでには至っていない。また特定の業務を100%の精度で遂行できたとしても、さまざまな業務をマルチにこなせる人間を配置しておく方が、トータルで見た場合に安上がりという場合もある。しかし、一般の企業でRPAやAI-OCRなどを活用する場合と同じように、これらの技術による自動化を前提として業務設計をし直すことで、現在の技術水準でも十分に人間の負担を減らすことができるだろう。

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