松島教授のアプリは、講義を受ける上で必ず買わなければいけないというものではないが、教科書指定としてシラバス(講義・授業計画)には載せているという。
「2018年以前は購入を推奨するだけで教科書にはしていなかったんです。ただ勉強してほしい人に限って教科書は読まない、アプリも買わない。基礎が分からないと試験もどうにもならないので、教科書に指定することにしました」
600円というアプリの価格は、学生の目にはどう映るのか。
講義後に無記名のアンケートを行ったところ、「600円という価格は最初は高いと思った」という声が聞こえてきたという。
「今の学生は、スマホゲームには課金しても有料のアプリを買うのはハードルがあるみたいですね」と松島教授は受け止めている。
しかし、買ってくれた学生からは「分かりやすかった」という声も。「講義の初めから買って使っているというよりは、試験が目前になって『こんなものがあるらしい』と試験対策に使っている学生さんもいるみたいです」
松島教授の研究室に所属している修士課程1年の小川由香子さんも、アプリユーザーの一人だ。
「最初は高いと思ってスルーしていたんですが、商品のキャンペーンでApp Storeで使えるコードが当たったので、そのポイントで買いました」と、価格感については正直な感想を話す。
「院試のときに復習に使いました。教科書だけだと分からない矢印の動きが分かって、紙よりも覚えやすかったです。移動中に気軽に勉強できたのもいいですね」(小川さん)
気になるのは、アプリを自主制作した上でかかった費用だ。アプリ開発自体は外注したもので、「外注費は自分のお小遣いでなんとかしましたが、有料で販売しているため、すでに回収はできました」と、具体的な費用や販売数について具体的な数字は伏せたものの、開発費のペイはできていると松島教授は語った。
購入のほとんどは日本からだが、英語に対応しているためか、米国など海外からの購入もたまにあるという。
Twitterで宣伝していることもあり、時折有名な人がリツイートしてくれるとそのタイミングで売上が増えることもあるという。学生向けに作ったアプリではあるが、海外やネットなど、思わぬところで反響を広げている。
現代の小中学生の学習環境では、教材にPCやタブレットを使用する事例はもちろんのこと、企業や個人がYouTubeで配信している講義コンテンツを見て学ぶというスタイルも増えてきている。
大学の講義も、講師がITを用いながら工夫していくことでだんだんと変わっていくのかもしれない。
【修正履歴:2020年1月20日午後5時 松島教授の指摘に基づき、覚えてほしい単語の例など一部表現を修正しました】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR