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“動かない電車”でテレワーク体験してみた 成田エクスプレスのグリーン車が15分100円 28日まで(3/3 ページ)

» 2020年11月27日 19時23分 公開
[石井徹ITmedia]
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車内設備、減便、幻のホーム……たまたま実施できる条件がそろっていた

 停車中の車内は、都会のにぎやかなカフェよりは静かで、仕事に十分集中できる環境だった。Wi-Fi、電源、トイレと設備もそろっている。立派なテレワーク設備となっていた。さらには駅チカどころか駅のホーム内にあるため電車によるアクセスも良好だ。

 ただ、この取り組みは、たまたま条件がそろっていたからこそ実現できたという側面もある。都心と国際空港をつなぐ特急として開発されたN'EXのE259系は、もともとビジネス向けの利用ニーズに対応していた。特急型車両よりも余裕を持たせた座席配置と、広めの格納式デスク、電源、Wi-Fi環境はいずれもテレワークに必要なものだ。そして空港利用客が減少している現状では、減便によって車両運用に余裕が生じているのもある。

 さらに今回の実施場所となった両国駅の3番線ホームは、「幻のホーム」とも呼ばれる、臨時列車用のホームだ。現在は土休日には自転車を持ち込めるサイクルトレイン「B.B.BASE」の拠点として活用されているが、午前8時台と午後7時台の発着時のみ開放されており、日中は空いたままだ。ちなみに、この3番線ホームは両国駅がもともと千葉方面のターミナル駅として開業したなごりで残されているもの。都心に近い立地という面でもシェアオフィスとして展開する上で好都合だ。

 今回の予約システムに使ったSTATION WORKは、JR東日本の駅構内で展開するボックス型のテレワーク設備を利用するためのサービスだ。19年からサービスを始め、徐々にスポットを増やしつつある。

 つまり、テレワークに都合の良い設備を持った列車が運用から外れており、立地の良い駅に長時間列車を留め置けるホームが空いていて、予約や決済のシステムも流用できたから、“動かない列車”でのテレワークが実現できたといえる。

 将来的に電車内でのコワーキングスペースを本格的なビジネスにしていくとは現状思えない。ただし、例えば「車内で仕事をして、息抜きに観光地を楽しめる」といったワーケーション型の旅行商品の実現も見込めるかもしれない。成田エクスプレスでのテレワーク体験は、新しい日常に鉄道会社がどのように適応していくのかを考える上でもヒントとなりそうだ。

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