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テレワーク正式導入のスクエニ、ゲーム開発への影響は? 「ドラクエX」責任者に聞く(2/2 ページ)

» 2021年01月26日 08時00分 公開
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2つの働き方を認める在宅勤務制度

 テレワーク環境の整備を進めるスクエニは、12月に在宅勤務を正式導入した際に、週3日以上在宅で働く「ホームベース」と週3日以上出社する「オフィスベース」という2つの働き方を、社員が選択できる制度を始めた。

 原則はホームベースを適用するが、出社しなければ取り組めない業務を担当する社員や、自宅では集中できないという社員には、適宜オフィスベースでの働き方を認めている。ゲーム開発のプロジェクトは工程によって仕事の量や質がかなり変わるため、見直しのタイミングを毎月設けて、各工程に適した働き方を適宜選べるようにしている(取材は緊急事態宣言発令前の2020年12月に実施)。

photo 青山さんの自宅の作業環境

 12月1日にテレワークを正式導入した時点では、全社員の8割がホームベースを選択。4月からの在宅勤務で働き方に慣れた社員も多かったため、大きな混乱を来すことはなかったという。

インフラやコミュニケーションの課題も

 一見すると順風満帆なスクエニの在宅勤務制度。だが全てがうまく運んだわけではなく、問題やトラブルも発生したという。

 その1つがITインフラの問題だ。スクエニにはドラクエXのような大規模な開発チームが複数あるが、どのチームでもデータの受け渡しには共有ストレージを使っている。だが開発の規模が大きくなるほど、受け渡すデータのサイズも大きくなる。そのためテレワークの開始当初は、複数人が同じ時間帯にデータの受け渡しを行うとサーバへの負荷が増大し、ダウンロード速度が落ちる問題があった。

 そこでチーム横断の会議を行い、データのダウンロードをそれぞれ別の時間に行うことを決定。アクセスを分散させることで負荷を抑えるようにした。この取り組みが功を奏し、現在はダウンロード速度を改善できているという。

 一方で、浮上した課題の中にはまだ解決していないものもある。青山さんが特に問題視しているのが「雑談の消失」だ。

 仕事とはまったく関係ないように見える雑談でも、長い目で見るとそこから思わぬアイデアが生まれることが多い。ときには、新しいゲームのベースとなるアイデアが生まれることもあるという。だが在宅勤務では、そうしたコミュニケーションがなかなか生まれない。

 「オフィスで皆が顔を合わせていたときには自然に交わされていた雑談だが、業務用のオンラインツール上ではなかなか自然発生しない。こうした制約を克服して、在宅勤務体制下におけるコミュニケーションの質と量をさらに高めていくことこそ、今後私たちが取り組むべき最大の課題だと考えている」(青山さん)

【訂正:2021年1月26日午前10時17分更新 ※キャプションの誤記を訂正しました】

【追記:2021年1月26日午後1時1分更新 ※追加の取材に基づき、4月の在宅勤務に関する記述を変更しました】

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