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新「nasne」の価格決定にデータサイエンス活用 従来は「勘、経験、度胸で決定」

» 2021年06月23日 19時55分 公開
[樋口隆充ITmedia]

 ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)からノウハウを継承し、バッファローが3月に発売したネットワークレコーダー「nasne」。2万9800円(税込)で販売を始め、すでに3次入荷分までが完売している。この価格は外部の企業とともにデータサイエンスを活用して決めたと、バッファローが自社のWebコンテンツで6月23日に明らかにした。

photo 3月にバッファローが発売した「nasne」

 バッファローはこれまで、製品の価格を「勘、経験、度胸」を基に決めていたが、nasneは価格を決めるに当たっての理論や根拠が社内になく、適正な値が判断できなかった。そこで、過去のデータから価格を算出するため、東京大学発のコンサル企業である東京大学エコノミックコンサルティング(UTEcon)に協力を依頼したという。

 まずは2020年12月から21年初頭にかけて、他社製レコーダー製品の過去の販売データや価格データを収集。その後、東大や慶応義塾大学などの経済学者計6人による週2回の会議を経て、1カ月ほどで分析モデルを作成した。モデルには売れ行きと季節性の関係や、販売チャネルごとの流通の慣行など、バッファローがビジネスの知見として持っていた定性的な情報も反映したという。

photo 過去のデータを分析し、nasneの価格を決めた、UTEconの渡辺安虎取締役

 最後に分析モデルにデータを当てはめ、算出した値を基に2月半ばに価格を決めた。UTEconの取締役で東京大学大学院の渡辺安虎教授(経済学研究科)は「研究では1年以上かかる作業量・検討量のプロジェクトだった。正直不安もあったが、専門家やアシスタントを合わせて16人のチームでやりきることができ、参加した研究者は皆驚いていた」としている。

 プロジェクトの成功を受け、バッファローでは今回の分析モデルを他の商品でも利用する取り組みが始まっているという。「流通やサプライチェーンが変化していく中で、データを基に未来を予測したという経験は大きな財産になる」(バッファロー)として、今後はデータサイエンスに長けた人材の育成にも取り組む方針だ。

 nasneは2012年にソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が発売したネットワークレコーダー。材料の半導体チップが調達できなくなったことから19年に出荷を終了したが、バッファローが事業を継承し、新モデルを発売した。

photo 渡辺取締役とバッファローの松崎真也部長(右)

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