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“6年ぶりに登場する新Windowsイベント”を楽しむために知っておきたい、これだけのこと(3/3 ページ)

» 2021年06月24日 12時24分 公開
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OSコアの世代が変わる

 「“次期”Windows」における内部的な変化に触れると、Windows OSで使用されている「コア」の世代が現行のものから一気に進むことが予想されている。現在Microsoft内部では「Semester」(セメスター)と呼ばれる半年単位でコアの開発世代を分けており、2021年後半にリリースが見込まれる「21H2」と呼ばれるバージョンのリリースでは2021年前半サイクルで開発された「Cobalt」(コバルト)と呼ばれるコアが採用される見込みだ。

 Cobaltにまつわる詳細はPC USERの連載記事を参照してほしいが、このサイクルで開発されるOSの最新のコアは必ずしも「Windows 10の大型アップデート」としては提供されておらず、そのときどきで「Windows Server」(Azureを含む)やWindows 10を含む他のプラットフォームのコアとして採用している。

 つまり、OSの“表層”の部分とは別に、会社全体を通して行われている開発サイクルということだ。この内部開発サイクルのOSコアにはそれまで特に名称はなかったようだが、2020年前半の開発サイクルで登場した「Manganese」(マンガニーズ、“マンガン”のこと)で初めて「元素」の名称が採用された(正確には1つ前の世代からHALOのゲーム世界で登場する架空の金属元素の名前が開発コード名として採用されている)。

 2020年後半はマンガンの次の元素である「Iron(アイアン、“鉄”のこと)」が採用され、今回話題になっているCobaltは2021年前半の開発サイクルに該当する。なお、次の開発サイクルとしてすでに「Nickel」(ニッケル)が走っている。

 Windows(Windows 10)の開発は現在5桁の数字のビルド番号で管理されているが、「2004(May 2020 Update)」「20H2(November 2020 Update)」「21H1(May 2021 Update)」の3つのバージョンのビルド番号はそれぞれ「Build 19041-10943」の連続した3つの数字に収まっている。

 MicrosoftではManganeseの開発ビルドについては「195xx-196xx」、Ironは「20xxx」、Cobaltは「21xxx」、Nickelは「22xxx」といった具合に1000番単位でコア世代によるおおよその区分けを行っており、これにならえばWindows 10における過去3つの大型アップデート(「2004」「20H2」「21H1」)はManganeseより前の世代にあたり、Cobaltでは一気にビルド番号がジャンプすることになる。つまり、過去1年半近くの開発サイクルで培われた機能アップデートが一気に反映される可能性が高く、それだけ内部的な変更点が多くなることが予想できる。

photo 21H1の次はどうなるのだろうか

変化するWindowsの提供形態

 現在、Windows 10は「Home/Pro/Enterprise/Education」といった具合に主に4つのエディションで構成されており、ターゲットに応じて機能や価格面での差異が図られている。一方で、Windows 10という「クライアントOS」としての違いはなく、機能の差異こそあれ基本的には同じ使い方が可能だ。

 PC USERの連載記事中でも触れているが、これが「“次期”Windows」の世代では「コンシューマー」と「エンタープライズ」(およびエデュケーション)で2つのターゲットによって明確に提供形態が分けられ、いわゆる「Windows 11」とは「“Sun Valley”を搭載したコンシューマー向けWindows」の“マーケティング的”な名称なのではないかという説がある。

 Neowinの記事にある図表が分かりやすいが、Windows 10の次期大型アップデート(機能アップデート)に該当する「21H2」では、一般ユーザーを対象に提供されるWindowsの提供形態が変化する可能性がある。

 どのような差別化が図られるのかはリーク画像の数々からは分からない部分だが、1つには「追加機能の提供」という可能性が考えられる。2021年後半に発表が噂されている「Cloud PC」(開発コード名:Deschutes)というサービスがあり、従来まで「Azure Virtual Desktop」(旧名:Windows Virtual Desktop)の名称で企業ユーザー向けに提供されていたサービスが、コンシューマー向けにさらに使いやすい形でクラウド上の仮想デスクトップ環境が利用できるようになるという。

 Cloud PCのみに限らず、サブスクリプションなどを通じて追加機能がMicrosoft 365のように新たに提供されることも考えられ、万人向けではないにしても、特定のユーザーにとっては非常に便利なものになるかもしれない。

 もう1つ、現状で使い方が不明なものに「Windows Feature Experience Pack」という仕組みがある。仕組みとしては「2004(May 2020 Update)」からすでに導入されており、Windows 11のリーク画像においてもシステム設定の概要確認画面でその存在が確認できる。だがこの「Windows Feature Experience Pack」だが、現時点でどのような使われ方がするのか、よく分かっていない。

 説明としては「Windows OSとは独立してシステムコンポーネントをアップデートできる仕組み」ということになっているが、現在のところ提供されているアップデート内容が「IMEの改良」など、微妙に核心に触れないものばかりで、将来的にどのように使われるのかが見えていない。実際、6月22日(米国時間)においても「Windows Feature Experience Pack 120.2212.3920.0」のWindows Insider Program参加者向けの配信が行われるなど地味にアップデートが行われているのだが、これが今後どのように効果的に利用されるのか、24日に開催されるイベントで改めて確認したいところだ。

「Windows 10が最後のOSになる」のではなかったのか

 最後に、「Microsoftは散々『Windows 10が最後のOSになる』と言ってきたのに、『Windows 11』のような新しい製品を出すの?」という意見に対する回答で締めたい。

 ここまで触れてきたように、「Windows 11」の名称が付いて、見た目や新機能が多数搭載されたとしても、アップデートそのものはWindows 10の延長線上にあり、バージョンもまた「21H2」と呼ばれる従来の大型アップデート(機能アップデート)に該当する位置付けとなる。そのため、既存のWindows 10が導入されたPCからの移行もスムーズで、新たに課金が行われるなどの心配もないと筆者は予想する。

 ただし、Cloud PCにみられるようにサブスクリプションが絡む可能性が高いクラウドサービスの話があったり、使い方のいまいち見えない「Windows Feature Experience Pack」のような仕組みもあり、「さらなる機能を求めるユーザーは別途サービス契約や追加オプションの購入が必要」といった誘導策が展開される可能性がある点には注意したい。以上を踏まえたうえで、当日発表される情報をイベントページでチェックしてみてほしい。

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