プロジェクト開始から足かけ約8年かかり、五輪本番での導入を実現した同システムだが、普及には設置の簡素化などが課題となる。花井さんはシステムの導入には「カメラの設置場所や照明など会場の条件がシビア」と話す。カメラのシャッタースピードを限界まで下げて撮影しており、照明が少しでも暗くなると解析対象の画像も暗くなることから、24台のカメラも正確な場所に配置しなければならない。このため、会場責任者や主催者との綿密な事前調整が必須だ。
同システムを広く世間に認知してもらうには、五輪や世界選手権を始めとした国際的なイベントのテレビ放送などで可視化映像を流す必要がある。東京五輪では個人戦のインターバルや試合後に競技会場内で映像が流れるのみで、本格的な国際デビューには至らなかった。
組織委員会との調整を担当した、三浦僚プロデューサーは「最近はテレビでの放送だけでなく、ネット配信でスポーツを観戦する人が増えている。今後はいかに国際的な配信システムに実装するかに注力していきたい」としている。システムの導入コスト削減も、長期的な課題となるという。
今後の展開について、三浦プロデューサーは五輪後に開催されるパラリンピックに言及。パラの競技団体は資金面で苦労していることに触れ「車いすフェンシングにもこのシステムを導入することでパラスポーツにも光が当たるのではないか」と指摘。「五輪は一つの通過点。このプロジェクトは長い軸で見なければならないものなので、一過性のものとしないようシステムを普及させ、フェンシング全体の普及にも貢献したい」とした。
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