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「サンプラーの元祖」メロトロンの構造がアナログの極みすぎる そして複雑な楽器の著作権問題について古代サンプラーがアプリになるまで(6/7 ページ)

» 2022年02月24日 13時42分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

アイコンのデザインについてもクレームがついた

 今度は商標ではなく、意匠で攻めてきたわけだ。ただ、変な話だと思った。Mellotronの商標は確かにキーン氏が買い取る形で所有している。だが、M400Sの意匠に関する領域まで排他的に権利を主張することができるのだろうか。

 一般論としてデザイン特許あるいは、トレードドレス(立体商標)といった仕組みで、商品の外観を知的財産権で保護するルールはあるが、M400Sの意匠がそれに該当するとは思えない。

 そこで筆者は、キーン氏に「調査の結果、あなたがMellotronの意匠に関する権利を有しているというエビデンスを確認することができないので、それに関する情報を知らせて欲しい。弊社の法律顧問と検討する」といった趣旨のメールをApple経由で送信した。

 すると、まったく返事がなく、約2カ月が経過したある日、Appleから「あなたの返答に対しキーン氏からは返事がないので、この問題はクローズする」といった趣旨の連絡が来た。キーン氏は意匠に関する排他的な権利を有していないので、沈黙したと理解している。それ以来、権利に関する問題は発生していない。

photo マニアやファンが見ると確かにMellotron M400Sとすぐ分かるデザインだが、これを意匠登録できるのだろうか?

 ちなみに、このようなアプリにまつわるクレームに関してAppleは、「力士と一緒に土俵に上がり行司的な振る舞いは一切しない」という態度を貫いている。

 あくまでも、双方のメールを仲介するメッセンジャー的役割に徹し、それ以上の行動はとらない。それはそうだろう。アプリに起因するトラブルに首を突っ込んでいたら、収集がつかなくなる。ただ、「この問題はクローズする」というメールを筆者とキーン氏に同報したということは、一応、経過を「見ている」のであろう。

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