西田 そこをちょっと確認しておきましょう。
2つポイントがあって。
まず、編集部をそのまま後継する、他のところに移行する、という話は、もちろんそういうお声がけはあったと。
矢崎 めちゃくちゃありました。
西田 でも、これはできなかった。
矢崎 できない。
私がまずその権利を持っていないんです。雇われ編集長なのでね。
とはいえ、私のところに問い合わせは来るじゃないですか。コーポレートに直接問い合わせがあったものも含めると、Engadget/TechCrunch合わせて、20以上あるんですよ。
これだけ問い合わせがある、ということは、(本社は)売ろうとしてない、ということじゃないですか。売ろうとしたらここまで問い合わせがあるわけないから。
西田 問い合わせがあって、売却の可能性があるんだったら、動いていますよね。
矢崎 動いている。
西田 問い合わせがあるけど動かなかったわけでしょ。
矢崎 動いてないし、問い合わせには社長から既に返信があって。
その文言は私も見ましたけれども、「これこれこういう事情で、譲渡・売却は考えていません」って、一括でお断りしたんです。
普通はね、この規模のサイトをね、常識的には売らないでクローズする、というのはありえないんですよ。
一からこれをやろうとしたらものすごい大変だし、「喉から手が出るほど欲しい」と言うところがたくさんあって。
Engadget以上に、TechCrunchに関してはそうで。日本のスタートアップの歴史みたいなものが詰まっているメディアで、他にはないんですよ。
西田 TechCrunch Japanに取り上げられる、というのが、日本のスタートアップにとってすごく特別な意味を持っていたから。
矢崎 もう、なんとかして残さなければいけない! というムーブメントみたいなのが起こっていて、支援者を募って、クラウドファンディングみたいなのが立ち上がる、みたいな話も聞いています。
両媒体とも、なんとかして継続させたい、という強い思いを受け止めていて……本当に嬉しかったのと同時に、申し訳ない。
もし、本当に買うんだったら、これはもう米Yahoo!のメディア事業ごとドルで買う、という話になりますよね。
西田 なるほどね。USのメディア事業を、Engadgetごと全部買え、という。
矢崎 切り売りはたぶんそもそも考えてない。そのリソースも割かない。
なかなか……常識的にはちょっと考えられないんだけれども、この規模のサイトを売らずに畳む、というのは、すごいなと思いましたね。
西田 そこで売らないことに何のメリットがあるのか。
矢崎 これはもう単純に、交渉やライセンスのリソースを社内で割けない、ということ。過去にもクローズした国もあるけれど、同じやり方だった。
交渉する人はUSにいない、ということなんじゃないですかね。
西田 なるほどね。
継続媒体がない、というのもあるけれど、アーカイブが残らない、というのがやっぱり、ちょっとね。
矢崎 そうなんですよ……。アーカイブだって、残しておくだけで、やらしい話、お金がちゃりちゃり入るんですよ。それすらしない、というのは、お金の問題じゃない! という考えですよね。
西田 あと、すごく細かい話ですけど。いわゆるブロガー契約、というのを我々しますよね。執筆に際して。
矢崎 ええ。
西田 あの時に、著作権譲渡の条項ってありましたっけ。
注:日本の著作権法では、著作者人格権は法律上譲渡できない権利とされている。そのため、正確には記事の利用権などについての条項の話と解釈していただきたい
矢崎 一応、契約書を交わしているライターさんに関しては、権利が米Yahoo!にある、という条項があるんですよね。で、米Yahoo!が著作権を放棄しない限りは、仮に(米Yahooの日本法人である)Boundlessが倒産しても関係ない。
西田 いやあ、これは本当に申し訳ないことなんだけど、僕が契約書を交わす時に、他のところは、著作権譲渡の条項があったら全部蹴ってるんですよ。たぶん、僕も信頼してそこを見なかったんだろうな、今回。
Engadgetの時には。記憶が実はなくて。
矢崎 いろいろ調べたライターさんもいて、聞いたんだけれども、やっぱり、権利があくまでライターさんと米Yahoo! Inc.の間で結ばれてる、という状態になってて……。
記事も、ネットから削除してるわけじゃないんですよ。
リダイレクトしてるだけで、アクセスできなくなってるだけ。存在はしてるんですよ、見えないだけで。
でも直打ちでも見られないし、検索にもかからない。
西田 そうか……。そこはどうしようもないですね。
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