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Metaだけではない ジャパンディスプレイ、ソニーも追う、新世代HMDの技術トレンドとは何か(2/7 ページ)

» 2022年06月29日 13時33分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

これからのHMDに必要な「解像感」 「解像度」との違いとは

 VR用HMDにおける「解像感」は、いわゆるディスプレイの「解像度」とはイコールでない点に留意していただきたい。重要なのは目に届いた時にどれだけ細かいところまで見えるのか、ということだ。レンズなどを通して像を見るので、ディスプレイデバイスの解像度と、HMDの性能として目に感じられる「解像感」はイコールではないのである。

 この辺ちょっとめんどくさいのだが、HMDのスペック上の表記は、現状、多くの製品が「表示デバイスの解像度」で表されている。「1920×1080ピクセル表示」「片目2K」などという場合には、あくまでデバイスの解像度であり、それがどう目に見えるかは、また別の話だったりする。

 例えば以下は、Metaの試作機の1つ「Butterscotch」の能力を説明するためのもの。Butterscotchは視力1.0(アメリカ表記では20/20)と同等の能力であることが示されている。一方でMeta Quest2は0.3強(アメリカ表記20/60)と、かなり解像感が落ちる。

photo Metaが試作機「Butterscotch」説明に公開した図。Butterscotchは視力1.0、Quest2は0.3強に相当

 Quest 2の使っているディスプレイパネルの解像度は1832×1920ピクセルとそれなりの値なのだが、それをレンズで広い視野へと広げているために「解像感」は落ちているのだ。「Butterscotch」では解像感を上げるために、Quest 2では100度だった視野角を60度にまで狭めているという。

 解像感はドット数ではなく、「PPD(Picture per Degree、視角あたりのドット数)」で表される。裸眼視力1.0で60PPDと言われるが、Quest 2の場合で20PPD程度だという。「Butterscotch」は55PPD前後だそうだから、かなり人間の視力に近い。

 PPDを上げるには、表示するディスプレイの解像度を上げることと、適切な視野角を実現する技術の両方が揃う必要がある。「Butterscotch」は現在あるデバイスで肉眼に近い解像感を目指した試作機、と言えるだろう。

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