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Metaだけではない ジャパンディスプレイ、ソニーも追う、新世代HMDの技術トレンドとは何か(5/7 ページ)

» 2022年06月29日 13時33分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

薄く・小さい「快適なHMD」を目指して

 HMDを作る場合、画質/解像度と同時に「快適さ」も重要になる。

 快適さに関わる要素も複数あるが、中でも大きいのは「いかに薄く、小さなサイズに収めるか」ということだろう。特に重要なのは、頭の前方に飛び出す部分を小さく、軽くすることだ。前方が重いとどうしても不快になる。だがHMDでは、ディスプレイに回路にレンズと、正面側に配置したい要素が多数あり、課題が多い。

 その際には、レンズなどの光学系をどう設計するか、ということが効いてくる。

 ここは視界を覆ってしまっていい「VR型」と、映像を透過させて周囲を見る「透過型AR」とでは要件が大きく異なる。

 Nreal Airのような透過型の場合、目の正面にディスプレイを配置できないため、配置は相当工夫しないといけない。マイクロソフトの「HoloLens」もこのパターン。各社工夫している最中だ。Nreal Airの場合には視野の上の方に下を向いた形でマイクロOLEDを配置し、プリズムで90度光を曲げて目に届ける、比較的シンプルな構造を採っている。その関係上、視野を広くしづらいという課題もある。

photo Nreal Airを下から見ると、瞼の上くらいに配置されたマイクロOLEDの像が直接見える

 目を覆ってしまうVR系、もしくはカメラで外部を捉える「ビデオシースルーAR」の場合、設計の自由度はさらに高まる。

 ここで注目されているのが「レンズの薄型化」である。

 前出「MeganeX」の場合、特異ではあるがかなりコンパクトなボディが実現されている。Kopinとの協業はマイクロOLEDだけでなくレンズにもおよび、Kopinが「Pancakeレンズ」と呼ぶ構造を採用しているため、比較的コンパクトでありながら、解像感と広い視野の両立ができている。

 昨年発売されたHTCの「VIVE Flow」も、同様にパンケーキレンズを採用しているし、Metaが今年発売を予定している新デバイス「Project Cambria」もパンケーキレンズを採用する。小型化を重視するデバイスでは、しばらくトレンドになりそうだ。

photo VIVE Flow

 なお、SIEが発売を予定している「PlayStation VR2」はパンケーキレンズではなく「フレネルレンズ」を採用する。おそらくディスプレイパネルが大きめのサイズで、視野の広さ(110度)を重視した設計になるからだろう。

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