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Metaだけではない ジャパンディスプレイ、ソニーも追う、新世代HMDの技術トレンドとは何か(6/7 ページ)

» 2022年06月29日 13時33分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

「ホログラム光学系」に注目せよ

 その上で、Metaがさらなる薄型化技術として注目しているのが「ホログラム光学系」だ。ホログラムというとお札やクレジットカードについている虹色のアレを思い出すが、それと「定義としては同じだが役割が違う」ものである。HMDの場合にはレンズと同じように「光源の光を目まで届ける」ために使うもの、と考えていただいて構わない。

 使われるのはホログラフィック光学素子(Holographic Optical Element、HOE)と呼ばれる技術。特定波長の光のみを回折するため、高い透明度と小型化を両立できる。

 写真は冒頭でも紹介した、Metaの試作機「Holocake 2」。HOEを使い、従来のHMDに比べかなりコンパクトになっているのがわかる。これはすでにPC向けのVR用HMDとして使うことが可能なものだという(ただし、量産を考慮していないので、そのまますぐ製品になるわけではない、という点は変わりない)。

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photo Metaが試作した「HOEによる薄型HMD」試作機である「Holocake 2」

 同じくHOEを使いコンセプト作りが進んでいるのが「Mirror Lake」。こちらはアイトラッキングや外界認識など、実用的な機能を全て備えつつ、よりコンパクトなHMDを作ることを目的としている。

photo Metaが開発中の「Mirror Lake」コンセプト画像。目の前の青い部分がHOEになる

 HOEに注目しているのはMetaだけではない。

 以下の写真は、先日ジャパンディスプレイが開いた技術展示会「METAGROWTH 2026」で展示した、HOEを使ったVR用の光学系だ。写真では映像がよく見えていないが、実物ではもちろんちゃんと見えている。このデバイスについては「技術的な詳細説明は開示できない」(同社担当者)だというが、数年後の製品化を目指し、開発が進んでいるという。

photo ジャパンディスプレイが試作中のVR向けHOEデバイス
photo 開発中のデバイスの詳細

 要は、HOEに注目しているのはMetaだけでなく、多くの企業が同じ方向で技術開発が進んでいる、ということなのだ。

 HOEには色の縞や滲みが出やすい、という課題があり、どこも同じように改善に取り組んでいる。ジャパンディスプレイも「詳細は話せないが、課題として認識し、解決を模索している」(同社担当者)とする。

 マイクロOLEDにしろHOEにしろ、多くのメーカーが同じ方向に進んでいるということは、それだけ「より快適なHMD」の市場が有望なもの、という期待がある、ということでもある。

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