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Teslaはハンドルとブレーキでレーシングゲームができる おならもする走るガジェット「Tesla」に乗ってます(2/2 ページ)

» 2022年08月21日 12時03分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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レインボーロードの謎

 これも車内エンタメの1つに数えていいと思うのですが、運転中にしか出現させることができないお楽しみがあります。Model 3の運転支援機能であるオートパイロットには、「レインボーロード」という茶目っ気たっぷりの隠しコマンドが用意されています。

 自動車専用道路でオートパイロットを作動させる場合、ハンドル右のシフトレバーをトントンと2度押し下げます。これを4度押し下げると「レインボーロード」版のオートパイロットが起動します。いや、別に大それた機能ではなく、単にスクリーンに映る車線が虹色のストリームに染まるだけなのですが、百聞は一見にしかず、次の動画をご覧ください。

約1分のBGMは1回だけ再生される。後はオートパイロットをキャンセルするまでレインボーロードが続く

 おそらくマリオカートのレインボーロードにインスパイアされた遊び心たっぷりの機能だと思います。ただ、謎過ぎる点があります。レインボーロードで再生されるBGMです。70年代に活躍したロックバンド、Blue Oyster Cultの代表曲「(Don't Fear) The Reaper」が流れます。

 しかし、単なるBGMではなく、その音源の内容が謎だらけなのです。というのは、「(Don't Fear) The Reaper」が流れるだけなら悩む必要はないのですが、その音源というのが、2000年4月8日放送の米国のバラエティー番組「サタデー・ナイト・ライブ」での司会者と出演者のコント中における絡みの部分を抜粋したものなのです。

 「(Don't Fear) The Reaper」は、カウベルが印象的な曲ですが、そのカウベルをコントの中で曲に合わせて叩くシーンの音源がそのまま使われています。司会者が「Guess what? I got a fever! And the only prescription.. is more cowbell!(何だと思う? 熱がでた! 処方箋はもっとカウベルを)」といった意味のトークをしています。この「More Cowbell」は長い歴史のある「サタデー・ナイト・ライブ」の中でも名物シーンに数えられているようです。ただ、これをレインボーロードで使う意味はどこにあるのでしょうか? 私には理解が追いつきません。

動画が取得できませんでした
問題のコント

 動画サイトで日本のコントを見るのが好きなイーロン・マスク氏だそうですが、コント好きが高じてサタデー・ナイト・ライブの有名なシーンを持ってきたのでしょうか。それとも「もっとカウベルを(More Cowbell)」は、このシーンがきっかけで米国ポップカルチャーのキャッチフレーズになったそうですが、そのあたりに関係しているのでしょうか。背景を知りたいものです。

 ちなみに、音楽制作を営む筆者としては、著作権や著作隣接権の処理が適切におこなわれているのか気になるところです。世界的な企業なので、法務関係の処理は抜かりないでしょうが、仮に、Teslaのドライバーがレインボーロードを起動するたびに、ロイヤリティがチャリンチャリンと管理団体や権利関係者に支払われているのなら微妙な心持ちです。

あまりにくだらないブーブークッション

 「おもちゃ箱」には、その名が示すとおり、ガラクタ的なアプリが揃っています。なかでもダントツにくだらないのは、「排ガステストモード」というブーブークッションアプリでしょう。シートを指定して「おなら」を仕掛けることができます。実にくだらないアプリですが、Tesla社内ではこれを真剣に企画してプログラミングしているわけですから、微笑ましいというかなんというか……。

photo 「排ガステストモード」アプリ。実にくだらんしけしからん(笑)

 余談ですが、2008年にAppleのApp Storeが始まった頃、多くの個人開発者がタップするとオナラの音がするアプリを審査に提出した事件(?)がありました。たまりかねたAppleは、審査のガイドラインに「われわれはオナラのアプリは必要ない」と明記したことは懐かしい思い出です。

 音楽好きにとっては気になる「TRAX」というアプリもあります。これは音楽史にその名を刻むドラムマシン「Roland TR-808」(通称:ヤオヤ)を模したアプリで、バスドラ、スネア、ハイハットなどをタイムライン上にマッピングしてグルーブパターンをつくって楽しむことができます。

photo 実機のRoland TR-808は、今やビンテージ楽器で数十万円の値が付くこともある

 ソニーが開発中のEV「Vision-S」には、音響、映像、ゲームといったゴージャスな車内エンタメが用意されているといいます。車内エンタメについて、「クルマに必要なの?」という意見も聞きますが、将来、自動運転が実用化された暁には、車内という価値空間において、良質なユーザー体験を提供できるか否かが、クルマを選ぶ基準の1つになる日がやってくるに違いないと信じています。Model 3の車内エンタメに接していると、今できる範囲において、将来のユーザー体験を先取りしていることが分かります。

photo ソニーのVision-Sのスクリーンだらけのコックピット。Model 3同様、物理ボタンは最小限に抑えられている

 最後に、個人的な謝辞を記して本稿を締めます。編集担当の松尾公也氏が8月いっぱいでITmediaを卒業し、新天地に向けて旅立ちます。これまでありがとうございました。この1カ月で、自分的にはあり得ないペースで4本の記事を出稿したわけで、約束を果たすことできてホッとしています。新天地でのご活躍をお祈りします。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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