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Amazonが人を“運ぶ”時代が来る? ロボタクシー「Zoox」とは サンフランシスコでテスト車両を目撃シリコンバレーから見た風景(3/3 ページ)

» 2022年10月25日 10時30分 公開
[五島正浩ITmedia]
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なぜいまテスト車両を走らせているのか

 ではなぜ今Zooxはハイランダーのテスト車両を走らせているのでしょうか? もちろんロボタクシー専用車両のハードが完成する前から、自動運転に関するソフトウェアやセンサーシステムなどのテストを進めたいという意図があるのでしょう。さまざまな自動運転に必要な機能がテストされていると思いますが、その中の一つとしてZooxはハイランダーを使って高精細3Dマップ(High-Definition 3D Map)を作成するためのデータを収集しているとコメントしています。

ハイランダーを使って高精細3Dマップを作成。Zoox公式インスタグラムより

 高精細3Dマップはセルフドライビングカーのための地図で、自動運転技術では欠かせないものになっています。CruiseやWaymoなども同様に高精細3Dマップを作成し自動運転に利用しています。

 LiDARやカメラ等で構成されるセンサーシステムを搭載したテスト車両を街中で走行させることにより街の3Dのデータを収集することができます。集まった膨大なセンサーデータからAIを利用して車や歩行者などの一時的なもを判別し、それを取り除くことで街の3Dマップを作ります。これに信号、一時停止、制限速度、自転車専用レーンなどの車の走行に必要となる情報を自動化されたツールを使って付与しセルフドライビングカーが使えるマップが完成します。

 セルフドライビングカーはこのマップを利用することで、現在位置から目的地までの道の様子を事前に把握することができ、走行中はリアルタイムのセンサー情報を使って自分がマップ上のどの位置にいるのかを把握するとともに、ダイナミックに変化する周辺の自動車、歩行者、自転車などの認識に注力できるので自動運転の安全性が高まります。人間が全く初めての道を運転する時よりも、よく知っている道を運転する時の方が楽で安全に運転できる感じと似ているのかもしれませんね。

 ハイランダーのテスト車両は開発中のロボタクシー専用車両と同じセンサーシステムを使っているうえ、センサーのキャリブレーション技術も向上させているので、テスト車両を使って構築した高精細3Dマップは開発中のロボタクシー専用車両でも使えるそうです。

 これらの情報はZooxが公開しているジャーナルの記事(英語)にわかりやすく書かれていますので、詳細が知りたい方はぜひご覧ください。

 今回はサンフランシスコで目撃する機会が増えたAmazon系Zooxを紹介しました。Amazonがロボタクシー事業に向けて自動運転技術の開発に投資し、実際の専用車両まで作っているのは驚きです。Amazonはオンラインショップで商品を売り、その荷物を配送する会社だと思っていましたが、近い将来Amazonは人を“配送”する会社になるのでしょうか?

 Amazon.comでのオンラインショップが日常になり、荷物配送用の車両が大量に街中を走行しています。Amazonは配送先の目的地まで隈なく行き届く配送システムを構築していて、今や街と道を知り尽くしている会社の一つと言えるでしょう。Amazonが子会社Zooxを通じて配車サービスに参入し人を乗客として配送しようと考えるのも自然なことなのかもしれません。

 ところで、ロボタクシー専用車両が増えていくとどんな街になるか想像できますか? 興味のある方はKhalidの「New Normal」のミュージックビデオをお勧めします。Zooxが出てくる冒頭の街のシーンがヒントになるかもしれません。

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