初めてこのJikasei MENSHOに来たのは10月中旬でした。イーロン・マスク氏のTwitter買収が完了する前のことです。最近ビーガン対応のラーメンに興味があって、その時はビーガン坦々麺を食べたのですが、これが激ウマ。一緒に行った人は味玉醤油ラーメンを頼んだのですが、横で見ていて大きなチャーシュー、味玉、そしてスープの味が気になって仕方ありませんでした。
私の住んでいるエリアからサンフランシスコまでは車で片道約1時間かかります。またオフィス街を意識しているためか店舗の営業時間が平日のランチとディナーのみになっていて、週末にサンフランシスコに出かけたついでに寄ることが出来ません。私の場合ここに来るには平日に気合を入れてくる必要があります。
連日のニュースでTwitter本社ビルを見ていると、ついついここのラーメンのことを思い出してまた食べたくなります。そこで休日前の夕方、仕事を早めに切り上げて出かけることにしました。今回は迷わず味玉醤油ラーメンを注文。こちらも期待通り美味しいラーメンでした。
今回は一人で来たのですが、一人でラーメンを食べ始めると無意識のうちにスマホでTwitterアプリを開き、Twitterの買収に関するニュースをチェックし始めてしまいます。改めてTwitterが自分の生活の一部になっていることに気付かされます。そしてここが渦中のTwitter本社ビルだと思うと、なんだか不思議な感覚です。
ラーメンを食べながらTwitterの買収に関するニュースを改めて見直してみました。やはり気になるのはイーロン・マスク氏が440億ドルもの膨大なお金を投資して何を実現したいのか?ということ。4月の買収提案時のニュースによると、Twitterが持つ言論の自由を実現するプラットフォームとしての可能性を高く評価しているとあります。2年前の大統領選挙で大きな議論になった社会問題に対して、Twitterという既存プラットフォームをベースに彼の理想とするSNSを実現したいということなのでしょう。
もう一つ気になるのは元Twitter CEOのジャック・ドーシー氏のこと。彼はTwitterのようなSNSは企業や国家によって中央集中的に管理されるのではなく、オープンな分散型プロトコルになるべきだと考え、2019年にBlueskyを立ち上げています。Twitterの買収が完了する少し前の10月18日にはSkyblueは「AT Protocol」を発表し、全く新しいソーシャルアプリBlueskyのパブリックベータを近々始めるとしています。
一見この二人のアプローチは相入れない部分があるように感じますが、解決しようとしている問題には共通の部分がありそうです。CNNの記事によると二人はこれまでもサポートしあい、新しいSNSのプラットフォームの方向性についても議論してきたそうです。実際ジャック・ドーシー氏は約2.4%のTwitter株を現金化せずにイーロン・マスク氏の会社にロールオーバーすることでTwitterへの投資家として協力しているとのこと。もしかすると、この2人が次世代のSNSのアーキテクチャをリードをしていくのかもしれません。
ただし、その雲行きも怪しくなってきています。最近はジャック・ドーシー氏がTwitter傘下のニューズレターサービスRevueでイーロン・マスク氏による暴露「#Twitter Files」を批難したところ翌日にRevueが終了になったり、Twitterが他のSNS上の自分のアカウントや投稿をツイートすることを正式に禁じると発表したところジャック・ドーシー氏が否定的な意見をツイートしたり、二人の意見の相違や対立が目立つようになってきています。
こうしてネットのニュースを追いながら未来のことを想像するのは楽しいのですが、ラーメンを食べ終えるころには現実に戻ります。今回の買収に伴って大規模なレイオフが実施されています。会社を離れなければならなくなった人も、残る人も大変な思いをしていることでしょう。シリコンバレーで働いている以上、同じことがいつ自分の身に降りかかってくるかわかりません。
大規模レイオフを行う会社が増えてきて不安も募りますが、温かくて美味しいラーメンはそんな心を癒してくれます。また日本のラーメンのコアの部分を守りつつも、新しいテーストやスタイルを取り入れ、果敢にグローバル展開に挑戦していくラーメン店の姿をみると自分も頑張ろうという気持ちになります。
Twitterの買収や大規模レイオフなど大きなニュースが日々飛び交うサンフランシスコ・ベイエリアですが、ラーメン文化が徐々に浸透してきています。
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