本来は理想の実現に専念すべきところですが、自分が買収するまでのTwitterにどれだけ問題があったかを説明したい気持ちが強かったのでしょう。マスク氏は12月、「#Twitter Files」として、自分が買収する前のTwitterの問題を暴くシリーズを外部ライターに書かせ、発表させはじめました。
例えば、ドナルド・トランプ大統領(当時)のTwitterアカウントを凍結するまでの従業員たちの「悪行」を、当時の社内Slack上のでのやりとりなどを交えて「暴露」するというものです。
筆者も読みましたが、悪行というより、前代未聞の問題について、内部の人々がいかに真剣に取り組み、真摯に話し合ったかが分かるだけという印象でした。マスク氏はメディアにセンセーションを巻き起こすつもりだったようですが、主要メディアはほとんどスルーしました。
この#Twitter Filesを外部ライターに書かせるに当たり、マスク氏はライターにTwitter上のすべての個人データへのアクセスを許可させるよう従業員に命じたと米Washington Postは報じています。
勇気ある従業員は、当然これを拒否しました(拒否した従業員は解雇されました)。そんなことをすれば米連邦取引委員会(FTC)が黙っていないであろうからです。
そうした懸念を表明した従業員に対し、マスク氏は「心配には及ばない。(自分がCEOを務めている)Teslaはプライバシー問題について豊富な経験を持っている」と語ったそうですが。
Twitterは2009年に個人データ漏えい事件を起こし、FTCに大目玉をくらいました。2010年に和解した条件には包括的な情報セキュリティプログラムを構築・保守することが含まれていました。
FTCは5月に、和解に違反したとしてTwitterに1億5000万ドルの罰金支払いを命じています。
外部ライターにデータへのアクセスを許すのも、この和解条件に違反すると見なされそうです。
公開された#Twitter Filesには複数の社内DMのスクリーンショットが含まれていますが、Twitterの担当者はそれらはライターが直接見たのではなく、画像を渡しただけだと説明しました。
FTCは11月には、「Twitterの最近の動きに強い懸念」と表明しました。
マスク氏は、命令に背く従業員を解雇するだけではなく、思い通りにならないツイートを続けるユーザーのアカウントの凍結もしました。
言論の自由を謳いつつ、自分の自家用ジェットの(ほぼ)リアルタイム位置情報をツイートするbot、@ElonJetとその製作者であるジャック・スウィーニー氏のアカウントを凍結したのです。
この凍結を正当化するために、Twitterは凍結後、プライバシーに関するポリシーを更新までしました。
その後、この件を記事にしたジャーナリスト数人のアカウントも凍結しましたが、こちらはほぼ解除されています。
このジャーナリストの凍結解除も、Twitter投票の結果に従って実施した形にはなっていますが、同氏のこれまでのTwitter投票の利用を見ると、先に結論ありきな気もします。
投票なしでいつの間にか変更されたポリシーもあります。MastodonなどのSNS上のアカウントをツイートすることを禁じることになった際は事前の投票はありませんでした。もっとも、そのポリシーを撤廃する際には投票が行われ、その後いつの間にかこのポリシーは消滅しました。
CEO辞めてもいい? という投票も、先に結論があったのでしょう。実際、11月の時点で「そのうちTwitterの運営者を見つけるつもりだ」と語ったと報じられています。
Twitterがすぐに消滅することはないでしょうが、存続が心配になるような爆弾を幾つか抱えています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR