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イーロン・マスク氏に翻弄された2022年を振り返る(1/3 ページ)

» 2022年12月29日 08時00分 公開
[佐藤由紀子ITmedia]

 2022年は、海外速報担当の筆者にとって、イーロン・マスク氏(51)に翻弄された年でした。Tesla(電気自動車)、SpaceX(宇宙開発と衛星ネット)、Neuralink(脳埋め込み端末)、Boring Company(トンネル)を経営する同氏によるTwitter(SNSプラットフォーム)の買収とその後が激動すぎたからです。

 マスク氏によるTwitter買収騒動のこれまでとこれからについて、まとめておきます。

 musk イーロン・マスク氏近影(本人のツイートより。ハロウィーンの仮装で、ちなみにこのコスチュームは7500ドル)

買収までの混乱

 マスク氏は2009年から頻繁にツイートするアクティブユーザーでした。また、「Twitter投票」も、例えば2021年11月の「Teslaの株を売却してもいい?」などで使っていました。

 買収を公に匂わせはじめたのは今年3月のこと。「言論の自由は、民主主義に不可欠だ。Twitterはこの原則を守っていると思うか?」というTwitter投票を投稿しました。

 マスク氏はその段階で既にTwitterの株式の9.2%を買収済みで、個人としてのTwitterの最大株主になっていました。

 そして、4月には440億ドルでの買収に同意。Twitterを「人類の未来に不可欠な問題が議論されるデジタルタウンホール」として育てていくという意欲を見せました。

 ted 4月のTEDで買収提案について聞かれたマスク氏の反応

 ところが7月になって、Twitterが契約違反したとして買収取りやめをTwitterに通知。契約違反というのは、mDAU(収益対象になる日間アクティブユーザー数)に占めるスパムアカウントの量が約5%としていたのは嘘じゃないか(実際にはもっと多いんじゃないか)、という主張でした。

 それに対し、Twitterがマスク氏を提訴し、マスク氏が勝訴するのは難しい状況になり、結局買収に再合意して完了しました。

 その時点で、11月には上場廃止する計画も明らかにしました。

幹部と従業員の大量解雇

 買収すると覚悟を決めたマスク氏は、Twitterを自分の理想のプラットフォームに作り変えるために、まずは意に沿わない幹部を多数解雇従業員の75%を解雇すると予告し、ハードコア(必死に働くこと)か退社かと迫り、大量解雇を実施しました。

 大量解雇を生き延びたSafety & Integrity担当ディレクターのヨエル・ロス氏も11月中旬には自らTwitterを去り、その顛末やTwitterの未来についての危惧をThe New York Timesに寄稿しました。

 yoel ヨエル・ロス氏によるThe New York Timesへの寄稿記事は話題になりました

 マスク氏がそんなロス氏を攻撃し、前前CEOのジャック・ドーシー氏にたしなめられるという一幕も。

 この大量解雇やその後も続いた解雇、ロス氏のような自主的な退職の結果、10月時点で約7500人だった従業員数は、(非上場になったので公式な数は不明ですが)現在は約1800人くらいになっているとみられています。広報窓口もいなくなってしまったので、アイティメディアを含め世界中のメディアが困っています。

 yoel 2 ロス氏は現在、Mastodonのアカウントで時々toot(ツイートにあたるMastodon投稿)しています(画像は11月20日にTwitterを退社したときのtoot)

マスク氏の野望

 マスク氏はTwitterを買収して何をしたかったのでしょう?

 自分の思い通りにしたかっただけだろうとか、気に食わないユーザーを凍結したかったのだろうとかいう見解もありますが、本人が何度も言っているように、Twitterを民主主義に不可欠なデジタルタウンホールにしたい、というのが根本にはあると思います。

 また、5月にThe New York Timesが報じたプレゼン資料にある「X」構想もまだ生きているでしょう。買収完了の段階にも「Twitter買収はすべてのアプリであるXの構築を促進するものだ」とツイートしています。

 Xが何かは具体的な説明はありませんが、「すべてのアプリ」つまり、モバイル決済も動画投稿も、なんでもそれ1つでできるアプリ、という意味のようです。

 マスク氏はその理想実現のために、オフィスに泊まり込んで自らコードを書いているそうです。下のツイートはそんなパパに会いに来てもらうために息子のXちゃんに作ったTwitter社員証です。


#Twitter Files

 理想は理想、現実は現実です。

 Twitterを言論の自由を保証するタウンホールにしたいという理想を追いつつ、自分の思い通りにならない従業員やユーザーには我慢ならないようです。

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