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請求書受け取りSaaSでチェックすべき3つの観点 sweeep、バクラク請求書、invox、Bill Oneを比較するインボイス受領SaaS比較(2/4 ページ)

» 2023年01月18日 07時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

sweeep

 sweeepを提供するsweeep社は、オフィスから紙をなくすことや会計処理の自動化に強いこだわり持つ企業である。代表の村山毅氏が会計系コンサルティングファーム出身であり、2011年の創業時(当時の社名はオートメーションラボ)は自動化による業務改善コンサルティングを提供していた。18年からOCR付き請求書処理AI・sweeepの提供を開始している。

sweeepは「AI」の活用を大々的にうたう

 sweeepの最大の特徴はそのOCRエンジンの性能だ。正解性やスピードは業界内でも高い評価を受けており、22年にはクラウド会計ソフト・freee会計の請求書OCRエンジンとしても採用されている。また、自動でタグ付けなども行ってくれるため、書類の保管や検索にも強い。

 入力補助や郵送での受け取り代行サービスは提供していないが、毎月発生する請求書の一覧表を部門ごとに作成し受取有無を確認する機能や、アップロード専用サイトを通じて取引先から請求書を回収する機能など、実務に対する深い理解が感じられる機能群である。

 中小企業が経理のペーパーレス化、電子帳簿保存法対応、インボイス制度対応などを進める際の有効な選択肢の1つだろう。

バクラク請求書

 バクラク請求書は「全ての経済活動を、デジタル化する。」をミッションに掲げるLayerX社が提供している受取請求書SaaSである。LayerX社は法人支出に関わる業務の効率化を推進するバクラクシリーズとして、他にもバクラク申請(稟議)、バクラク経費精算、バクラク電子帳簿保存、バクラクビジネスカードを提供している。

使い勝手の良さを重視してバクラクのプロダクトは開発されている

 LayerX社はGunosy社の創業者である福島良典氏が設立した企業だ。創業当時はブロックチェーンに関する事業を手がけていたが、日本企業の支出に関わる業務プロセス全体に大きな課題を感じ、バクラク請求書を皮切りに、複数のサービスを矢継ぎ早に立ち上げた。このジャンルでは最後発ながら、3000社を超える企業に導入されている。

 バクラク請求書の特徴はUX(ユーザー・エクスペリエンス)の良さにある。開発部門の中にドメインエキスパートと呼ばれる経理業務の専門家を複数抱えており、実務レベルでの使いやすさと会計や税務における必要な機能を高度なレベルで融合することに成功している。

 AIやOCRの発展は目覚ましく、読取精度は各社ともに概ね95%以上となっており、すでに競争はソフトウェアとしてのUXに移っている中で、バクラク請求書の痒いところに手が届くさまざまな機能や開発スピードは、多くの経理から選ばれる十分な競争要因になっている。

 また、受取請求書を読み取って処理するだけでなく、社内稟議で承認データとスムーズにひも付けるために別サービスとしてバクラク申請も提供している。わざわざ別サービスとして切り出しているのは、受取請求書に特化した承認サービスでは業務の真の効率化につながらないからだ。

 日本には複数のワークフローツールが存在しているが、クラウドやAPIといった概念がない頃から提供されているものも多く、IT企業を中心に社内稟議ツールに不満を持っている企業は多かった。そこでLayerX社は既存のワークフローツールを丸ごと置き換えられるように、汎用的なツールとしてバクラク申請を開発し、提供している。

 LayerX社のミッションである「経済活動のデジタル化」という上位概念から考えれば、受取請求書SaaSも稟議サービスも1つのパーツに過ぎない。高度な専門知識と開発力を兼ね備えた企業であるLayerX社ならではのアプローチであるが、各サービスとの連携を進めつつ、ないものは自ら作ってしまうということができるのは強みである。

 受取請求書だけでなく、稟議やビジネスカードなどのバクラクシリーズで一気に社内業務をデジタル化することも視野に入れて検討してもらいたいサービスだ。

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