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請求書受け取りSaaSでチェックすべき3つの観点 sweeep、バクラク請求書、invox、Bill Oneを比較するインボイス受領SaaS比較(3/4 ページ)

» 2023年01月18日 07時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

invox受取請求書

 invox受取請求書は、マネーフォワード社やインフォマート社からも出資を受けるDeepwork社が提供するサービスである。19年から提供を開始し、累計5000社以上にサービスを提供している。

 特徴はOCRとオペレーター入力のハイブリット型であることだ。これまでに紹介したsweeepとバクラク請求書は高度なOCRによって請求書の各項目を瞬時に読み取り、支払いデータや会計データを作成することを強みとしている。invoxも高度なOCRを提供しているが、オプションとしてオペレーター入力も提供している点が違いだ。

AI OCRだけでなく、オペレータ入力を利用できるのがinvox受取請求書の特徴だ

 OCRのみであれば1枚50円で数分で処理完了、オペレーター入力であれば1枚100円で数時間〜数日で処理完了、と状況に応じて使い分けができるようになっている点も非常に親切な設計だ。

 OCRの精度が高く、機械学習により一度設定すれば次回からの処理はほぼ自動で対応可能であるとはいえ、初回処理時にはそれなりの手間がかかる。さらにFAXなどで送られてくる請求書や手書きのものは、都度手入力が必要になる。月に数十枚であれば問題ないが、数百枚を超える請求書を毎月処理する場合にはこの手間が重くのしかかってくる。コストと処理スピードのバランスを見ながら、正確に処理が行える点が大きな強みである。

 また請求書の受け取りについても、スキャンセンターで受け取って開封からスキャンまでを代行してくれるオプションサービスも提供している。コロナ禍でテレワークは増えたが、経理は郵送されてくる請求書を処理するために出社せざるを得ないことが多かった。受取代行サービスを使えば、経理は面倒な請求書の処理業務から解放される。

 請求書のデジタル化がだいぶ進んだとはいえ、全ての中小企業が対応できているわけではない。そのような状況の中でハイブリッド型のinvox請求書は、非常に現実的なサービスを提供している。取引先との関係で請求書のデジタル化を進めることが困難な企業はぜひ検討をしてもらいたい。

Bill One

 Bill OneはSansan社が提供する、請求書の受け取りに関する機能をワンストップで提供するサービスである。SansanといえばテレビCMでもお馴染みの名刺取り込みサービスであるが、新規事業であるBill Oneも急速に売り上げを伸ばしており、最新の四半期決算では売上高4億円(前年同期比で約4.5倍)となり、Sansan事業と比べるとまだ規模は小さいものの、他の受取請求書SaaSを圧倒する売り上げと成長率を誇っている。

 顧客は大企業が中心であり、導入企業のロゴには明治、損保ジャパン、コニカミノルタ、スマートニュース、Cookpadなど日本を代表する老舗企業からメガベンチャーまで錚々(そうそう)たる企業が並ぶ。大企業では毎月処理する請求書が数万枚あるケースもあり、また国内だけでも数十の拠点を抱えてる場合も多い。取引先の数も膨大であるため、請求書の受け取りを一括でデジタル化することも容易ではない。

 大手企業を中心に「DXプロジェクト」などと称した社内業務のデジタル化・効率化に関する取り組みが近年は盛んであるが、受取請求書の処理業務のデジタル化については発行元企業への対応依頼や社内運用変更など、規模が大きい企業ほどかなり準備を要する一大プロジェクトである。

 SaaSの機能としてOCR処理や振込データ・会計データの作成ができたとしても、月初から数営業日で回収から処理までを滞りなく完了させる体制を維持しつつ、移行させるプロジェクトの難易度は高い。そのため大企業では受取請求書の処理は丸ごと外部に委託してしまうケースも多かった。

 そこでBill Oneでは「あらゆる請求書をオンラインで受け取れる」を掲げ、請求書の発行元に負担をかけることなく、さまざまな方法・形式で届いていた請求書を受け取り、処理するワンストップサービスを提供している。入力の精度は99.9%。AI、OCR、オペレーターというあらゆる方法を駆使して、素早く正確にどんな請求書も処理し、クラウド上で一元管理できるようにしている。

電子データ、メール添付、郵送といったさまざまな形式の請求書を、Bill Oneが一括して受取り、データ化するサービスを提供する

 利用企業には上場企業も多いため、数万件の請求書であっても問題なく処理できるキャパシティが求められる。現段階でこのような要求に応えられるのはおそらくBill Oneだけだろう。SaaSを開発する企業が巨大な処理能力を要する事務処理センターを構築することは容易ではないが、Sansan社にはこれまで大量の名刺処理で培ったノウハウと優秀なオペレーターが多数在籍しているため、コロナ禍で急速に高まった受取請求書のデジタル化ニーズに対応することができたのだろう。

 名刺にも決まった形式はなく、全てをAIやOCRだけで完璧に処理することは現段階では困難だ。それらを補正するオペレーターの存在は不可欠であり、効率的に処理するための仕組みを構築する必要があるが、その資産がそのまま受取請求書の処理にも生かされている。

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