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「Dropbox」と「Box」、老舗クラウドストレージを企業があえて使い続ける納得の理由クラウドストレージSaaS比較(2/4 ページ)

» 2023年01月30日 11時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

Dropbox――ローカル保存したファイルの同期を重視

 米国に本社を置くDropbox社は、マサチューセッツ工科大学の学生であったドリュー・ハウストン(現CEO)とアラシュ・フェルドーシ(現CTO)が2007年に設立した会社だ。初期のYコンビネータ(ポール・グレアムらによって設立されたシードアクセラレータプログラム)卒業生の中での最高の成功例だといわれている。

DropboxのWebページ

 11年には正式に日本語対応も行い、18年にNASDAQに上場している。Dropboxは7億人以上のユーザーに利用されており、クラウドストレージの最大手である。

 Dropboxが生まれたきっかけは、当時24歳だったドリュー・ヒューストンが、USBメモリを壊して大事なデータを紛失しそうになったことである。物理的なデバイスを持ち歩くことなくデータ共有するためにはどうすればいいか、という着眼点が世界的なサービスを生み出した。

 端末に保存したファイルがあっという間にクラウド上で同期されるデモ動画は、リリース直後から世界中で「魔法のようだ」という驚きをもって拡散され、Dropboxはクラウドストレージという分野のトップランナーになった。

 Dropboxの特徴は、PC上にローカル保存したファイルをクラウド同期することを重視している点だ。Dropboxのアプリをダウンロードすると作成されるDropbox専用フォルダにファイルを置くだけで、クラウド同期が開始される。複雑な設定や操作は一切不要である点が多くの人々の支持を集めることとなり、Dropboxはまずは個人向けのクラウドストレージサービスとして盤石の地位を確立した。

 また、ネットワークが現在ほど高速でもなく、Wi-Fiなども普及していない10年代前半においては、インターネットに接続していない環境でPCを操作することは頻繁にあった。そんなとき、Dropboxであれば同期されて最新になったファイルがローカル保存されており、滞りなく作業を進められた。

 デメリットは、PC本体に同期ファイル分の空き容量が必要なことと、ファイルの自動同期で大量の通信量を消費するため、ポケットWi-Fiなどで利用した場合はすぐに通信制限に引っかかってしまうことである。

 ビジネス向けのプランでは「スマートシンク」という機能を導入し、クラウド上のファイルを選択してローカルにダウンロードする機能も提供している。

 Dropboxの利点は、ITリテラシーが高くないユーザーであっても迷わないで操作できるシンプルな構造にある。大きな容量を比較的安価に少人数からでも使えるため、個人事業主やビジネスマンの副業でも活用されることが多いクラウドストレージである。

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