多分、この「Nothing」は、そういった使われ方が向いているように思うのだ。必要最小限、例えば、手帳とスマホ、バッテリーとケーブル、あと小ぶりの水筒に筆記具くらいだけを入れて遊びに行く。そういう使い方がとてもカッコよくキマる。ポケット沢山の機能優先のバッグにはない、持って歩いていること自体が目的になるようなバッグなのだ。
秋田氏は、「バッグを持ち歩かない人のバッグ」を作りたいと思ったそうだ。実際、秋田氏自身が手ぶら派であり、持ち歩くとしても、エコバッグのようなものに、必要最小限のものだけを入れて出掛けるそうだ。
つまり、これはファッショナブルなショッパー的なルックスを持ちながら、昭和のおじさん達が手放せないまま、リニューアルされず、ダサいアイテムとして一部で細々と使い続けられている「セカンドバッグ」の、未来的な展開でもあるのだ。このバッグの軽さとスマートさは、セカンドバッグ的に使われることで、機能性も発揮する。従来、セカンドバッグに入れていたようなものだけを入れて、行きつけの飲み屋に行けば、昭和のおじさんは、一挙にダンディなおじさんになる。このバッグの大きくて存在感はあるのに邪魔にならない感じが、セカンドバッグ的なポジションをリニューアルするのに似合うのだ。
革自体が柔らかいから、こんなふうに広がる。それこそ、暑い日に脱いだ上着なんかも入れられる。スマートな外観こそ崩れるが、その気になれば、大容量のバッグになるというのも面白い。底板は中が見やすいように、赤と青のリバーシブルになっているセカンドバッグであると同時にショッパーでもあり、しかもそれが革製なのに柔らかいということは、かさ張るものを突っ込んでも、それなりに入ってしまうということでもある。もちろん、そういう使い方をすると形は崩れる。いつもそういう使い方をすれば、大きく型崩れして自立しなくなったり、革に変なシワやクセがつくかもしれない。
しかし、この使い方はデザイナーの秋田氏も実際に行っている使い方なのだ。そんな風に気軽に、フレキシブルに使って欲しいと秋田氏は言う。ただ、これだけキレイな革で、直線が美しい端正なバッグを、エコバッグみたいに使うのは、中々抵抗がある。
「使う人に、少しだけ緊張感を持ってもらいたいというのは、私のデザイン全般に言えることです。『品』というのは、そういうところから生まれると思うんです」と、秋田氏も言っているのだけど、その上で、道具として、好きに使って欲しいとも考えているそうだ。
緊張感のあるデザインで、エッジが立っているように見えて、しかし柔らかくて軽くて、エコバッグやセカンドバッグ的に使える。革のブリーフケースとしてオーソドックスにも見えるルックスなのに、本質は紙袋的で、暑い日に着ていたパーカーを詰め込むような使い方も出来る一方で、きちんとケアしないと型崩れしやすかったりもする。
この相反する要素がギッチリと詰め込まれたバッグが、とてもスマートでおとなしい佇まいだという不思議。多分、こういうバッグは、メーカーのレギュラー商品としては出てこないと思う。この面白さが分かる人が沢山いるといいなあ。
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