インボイスをめぐっては、声優、漫画家・脚本家・アニメ・演劇人・税理士など、さまざまな団体が反対運動を続けている。有志が政治家へのロビー活動を行っており、これまで約100人の政治家に会ってきたという。野党議員を中心に昨年11月、「インボイス問題検討・超党派議員連盟」も立ち上がり、国会で盛んに質問が行われている。
反対論を意識した政府は、納税額を売上税額の2割に軽減する措置(2割特例)を3年間限定で導入するなどの発表した。
激変緩和措置について小泉さんは、「3年間だけまけてあげるから、その間に何とかして」というその場しのぎでしかなく、根本的な解決になっていないと訴える。「『ポイントをあげるからマイナンバーカードを取得して』と誘うマイナンバーカードと同じことが、インボイスで行われようとしている」
激変緩和措置についても、6081人の個人と30の団体が反対を表明している。
インボイス事業者を公表する国税庁のWebサイトで、個人事業主の本名などが一括ダウンロードできてしまう”身バレ”問題にも進展は見られない。
「(国税庁は)システムを改修したと言うが、Excelを使った簡単なプログラムを使えば誰でもすべて復元できる状態だ。サイトを通じて簡単に事業者の本名が手に入るのは、芸名やペンネームを使っている人には大きな問題。ストーカー被害などもあり得る」と小泉さんは危惧(きぐ)する。
「もらった消費税は払えという“クソリプ”が付くが」――映画やドラマなどを幅広く手掛けてきた映像ディレクターのブンサダカさんは、消費税が上がっても代金に上乗せできない実情を訴える。「消費税が上がった分、広告代理店から値下げを要求された。断ると発注が止まった」(ブンさん)
発注主との力関係により、増税分を価格に転嫁できない中小事業者は多い。公正取引員会の調査によると、2013年に消費税引き上げ(5%→8%)が行われた際、大手小売業者から値下げ要求を受けたと答えたメーカーは4割近くに上ったという。
不公正な商取引は、公正取引委員会が取り締まるとされているが「公取委の拠点は全国に数十カ所、インボイスに関係する事業者は1000万ともいわれ、対応が整っているとはとうてい言えない」と小泉さんは指摘する。
ヨガインストラクターの塙律子さんも、「業務委託契約を結んでいるフィットネスクラブやスタジオの一部から、インボイスに登録しない場合は報酬を減額するという通知が来ている」と話す。昨年度の年収は100万円に満たず、共働きで2人の子どもをかかえ、ギリギリの生活を強いられているという。
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