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「インボイスはデスゲーム」、税の押し付け合いが始まる 反対署名18万、 “身バレ”問題も未解決(3/4 ページ)

» 2023年02月14日 09時54分 公開
[岡田有花ITmedia]

「僕らは日本を捨てます」とクリエイター

 映像クリエイターのブンさんは、年収1000万円を超える課税事業者だが、コストが大きい(例えば、月固定費だけでAutodeskに約15万円、Adobeに約5万円、ハードに約15万円、サーバに約5万円、電気・通信費に約10万円……合計約50万円)上、テレビ局などの制作費用が年々減っているため予算はギリギリだ。インボイスが始まり、制作に参加してくれる免税事業者(俳優など)の消費税分を肩代わりすると、経営はさらに厳しくなる。

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 赤字スレスレでも文化を創る仕事に誇りを持っていたが、仲間のクリエイターは次々に米国や中国などに渡っているという。「インボイスがこのまま続行されるなら、クルーを連れて海外に行く手もある。官僚も政府も日本の文化が大嫌いのようで、毎回いじめられるので、このままならば、僕らは日本を捨てます。僕らには選択肢がある」

 ロフトの加藤代表も「この国は文化や芸術を重く見ていない。商売にしか見ていないんだと思う。日本の文化芸術は今でも遅れをとっているが、さらに遅れてしまう」と危機感をあらわにする。

企業の経理に無駄な業務

 企業も例外ではない。“経理のプロ”として、多くの中小企業でパートタイム経理として働く、経営士の堺剛さんによると、中小企業の管理部門はほぼワンオペ状態で、経理・総務・労務などを数人で回しており、インボイス対応でさらに忙しくなりそうだ。

画像 経営士の堺さん

 経理担当者には、請求書がインボイスの形式に合っているか確認し、インボイス番号も確認するという作業が新たに必要になる。取引先が100社あれば、1社3分で終わったとしても300分、5時間分の、付加価値を生まない“無駄な作業”が発生する。「国は中小企業に付加価値を生む努力を求めながら、何の価値を生まない作業を押しつけている」(堺さん)

 経理担当者の間でも個人事業主への発注を控えるよう、担当部署に依頼する動きが出ているという。「インボイスは、岸田政権が掲げている、フリーランス活用や起業しやすい活用づくりに逆行する」(堺さん)

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