しかも、シャー芯の製法は、各メーカーそれぞれが独自に開発して特許を取るので、他のメーカーの作り方は特許で公開されている部分しか分からず、また、特許で守られている期間は、その製法を使うわけに行かないこともあって、とても秘密の多い状態なのだという。各メーカーが手探りと手作業で、しのぎを削っているのだ。
今回、ぺんてるが「Pentel Ain」で実現したのが、滑らかな書き味。実際に、従来のぺんてるの芯「アイン替芯 シュタイン」と比べてみると、明らかに、ぬるっとした鉛筆に近い書き味が得られる。
同じ時期にぺんてるから発売された、自動芯出し機構を備えたシャープペンシル「オレンズAT」と組み合わせると、ノックする必要がなく書けるせいか、シャープペンシルにありがちのカリカリした感触や、紙に引っ掛かる感じもなく、これなら、普段使いにしたいと感じる書き心地なのだ。
「シャープペンシルの芯の開発は、時間がかかります。今回の『Pentel Ain』にしても、いつ開発が始まったかと聞かれると、前の『アイン替芯シュタイン』の発売直後からということになりますし、『Pentel Ain』を発売した今も、改良に取り掛かっています」と、ぺんてる研究開発本部の坂田祖(さかたはじめ)氏。
ずっと、より折れにくく、より濃く、汚れにくく、消しやすく、なめらかに、といった要素について、向上を図るのが芯の開発なのだという。ここのところは、各社とも折れにくさに開発の焦点があたっていたが、それはある程度達成された上に、シャープペンシルの機能の向上もあって、実用上は気にしないでも済むレベルに達している。
実のところ、シャー芯の性能、例えば濃さと折れにくさは、相反関係にある。濃くするためには着色剤である黒鉛を増やす必要があるが、そうすると折れやすくなるのだ。また、芯の消耗量を増やして濃さを実現しようとすると、芯の減りは早くなり、筆記時に手が汚れやすくなったりもする。逆に、芯を折れにくくしようとすると硬くなり、筆記線は薄くなる。
つまり、実用的な芯を作るためには、総合的なバランスが重要になる。ぺんてるでは、どれかの性能に特化するよりも、全体にバランスよく性能を発揮できるように調整する方向で、芯を作っているという。
その中で、折れやすさや濃さなどのシャー芯の基本品質を犠牲にすることなく、滑らかさを実現したのが、今回の新製品というわけだ。
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