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運転席に誰もいない 「ロボタクシー」に公道で乗ってみたら想像以上に快適だった話シリコンバレーから見た風景(4/4 ページ)

» 2023年02月24日 14時30分 公開
[五島正浩ITmedia]
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乗車して気づいた安全面のこと

 これまでに計4回利用したのですが、どの乗車体験も素晴しく、自動運転技術の完成度の高さに驚きました。自動運転での走行時だけでなく、配車サービスとして必要不可欠な乗降時の対応やアプリとの連携なども実によくできていて予想以上です。ここでは実際に乗車して気づいた安全面や危険回避のことをいくつか取り上げたいと思います。

 乗降時はかなり慎重な対応をしている印象を受けました。リクエストした車両が来たので乗車しようと近づいたところ、目の前を通りすぎて30mほど先の場所で停車したことがありました。

 私が待っていた場所は縦列駐車が多くて狭いうえ、すぐ近くの横断歩道には歩行者もいました。人が運転していれば多少無理をしてでも停車してもらえたかもしれませんが、ロボタクシーではそうはいきません。アルゴリズムで近隣の最も安全な場所を見つけ出して停車するようになっています。停車後に乗り場をアプリで通知してくれるので、焦って近づかずにアプリの指示に従うのが正解のようです。

アプリ内の乗り方ガイド。停車位置を見つけた後に乗車場所を通知するとある

 また乗車が完了していざ出発となってもなかなか動き出さないこともありました。確かに路肩にいったん停止してから本線に戻る時は、事故が発生しやすく慎重な安全確認が必要です。私の視点からは出発しても問題ないように見えましたが、自動運転的には安全が確認ができない何らかの要因があったようです。2分ほど経過し、数台の車が通過したのを確認してから無事出発しました。もし人が運転していたらイラっとする場面だと思います。トラブルでも起きたのかと不安にもなるので、安全確認に時間がかかっている場合には、何らかの音声ガイダンスがあると親切かもしれません。

 危険回避という点では、走行中に急にスピードを落として車線から外れたことがありました。突然だったのでちょっとびっくりしたのですが、右側後方から電動キックボードが車両の真横をすごいスピードで追い越していったので、ああこれかとすぐに理由が分かりました。人間だったら死角にあたるところもちゃんと認識し、危険回避措置をとっていて感心です。それにしても電動キックボードの危険な走行は止めて欲しい。

運転にいちゃもんを付けられない

 サンフランシスコの街中ではバス・タクシー専用レーンがあり、右折する直前にいったんこのレーンに車線変更する必要があります。自分で運転している時も厄介に感じて慎重になるのですが、自動運転でも同じようです。右折のために車線変更をしようとしたものの、専用レーンを走行するタクシーが速度を上げて近づいて来たため、即座に車線変更をやめるという場面がありました。次の信号で停止すると、そのタクシーの運転手はこちらに向かって「気を付けろ!」と言わんばかりに怒鳴ってきましたが、ドライバーがいないロボタクシーだと気付くと、指を差して笑いはじめました。それを見て私も思わず笑ってしまいました。

 これまではセルフドライビングカーが自動運転で安全に走行できるかどうかという点ばかりに注目していましたが、実際に乗車すると自分の視野が狭かったことを痛感しました。ロボタクシーの実現には、自動運転技術だけでなく乗降時の対応やアプリの使い勝手を含めた配車サービス全体を完成させる必要があり、Cruiseはすでにかなり高いユーザー体験を提供できるものになっていると感じました。このままのスピードで技術面やサービス面でのさらなる改善が進んでいけば、早いペースで普及が進むかもしれません。

 しかし、自動運転はまだまだ新しい技術です。セルフドライビングカーが街中を走行することに対してさまざまな意見があります。今後商用展開が進みより注目を集めるようになると、これまで以上に議論される機会が増えることでしょう。引き続きロボタクシーというイノベーションにチャレンジしていくCruiseを見守っていきたいと思います。

 CruiseにはWaymoという競合がいます。また既存の有人配車サービスUberやLyftとも料金やサービス内容で競争が始まるでしょう。ロボタクシーが参入してくることで配車サービス全体に変化が起きるかもしれません。

 Cruiseに乗車した様子を動画で撮影しました。いかに自然な運転だったのか見ていただければと思います。

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