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Slack vs. Chatwork ビジネスチャットの思想の違いを探るビジネスチャット対決(2/6 ページ)

» 2023年02月28日 08時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

Slack、伝説のスタートアップのピボット(事業転換)成功事例

 Slackというプロダクトが登場するまでの物語は、スタートアップのピボット(事業転換)成功事例として伝説となっている。

 2008年にスチュワート・バターフィールドは米Yahooを退職した後、「Glitch(グリッチ)」というオンラインゲームを開発していた。ゲームの出来は決して悪くなかったが、ヒットには恵まれなかった。12年に事業の継続を諦めて会社を清算することになるが、最後のあがきとして社内コミュニケーションのために開発したツールを商品化して売り出すことにする。それが14年にリリースされた「Slack(スラック)」である。

 Slackは大ヒットとなり、19年に株式上場、21年にはSalesforce社に277億ドル(約3.6兆円)で買収されている。

 スタートアップを中心にSlackのユーザーは一気に増え、全世界で1000万人超が利用している。17年に日本語対応を行ったこともあり、世界で2番目に日本がユーザーが多い市場だ。

 Slackの1つ目の特徴は、ワークスペースとチャンネル、スレッドという構造にある。ワークスペースは基本的には「組織」、つまりは企業ごとに発行するものだが、会社をまたいだプロジェクトやコミュニティ単位でも利用されているケースも多い。

 そのワークスペースの中に、ユーザーは自由にチャンネルと呼ばれる部屋を作ることができる。「営業」「マーケ」などの部門ごとにチャンネルを作る場合もあれば、「○○展示会」「○○案件」などのプロジェクト単位で作る場合もあり、その利用方法はユーザーの自由だ。

Slackの構造、筆者作成

 チャンネルの中で、ユーザーはチャットでやり取りをするわけだが、特定のチャット(話題)に関して返信や書き込みをする場合にはスレッド機能を使う。メールの返信機能のようなイメージを持ってもらえると分かりやすい。チャンネルには複数のユーザーがいるため、各自がそのまま書き込んでいくと何の話題に対してのやり取りなのかが分からなくなってしまうが、スレッド機能を使うことで、特定の話題についてのやり取りを関係者だけで行うことができる。

 いずれの機能もSlackが考案したものではないが、チャット上で円滑にコミュニケーションを行えるようにチューニングされており、あらゆるチャットツールの中でも群を抜いてSlackのこの構造と機能は使いやすくできている。

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