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Slack vs. Chatwork ビジネスチャットの思想の違いを探るビジネスチャット対決(4/6 ページ)

» 2023年02月28日 08時00分 公開
[武内俊介ITmedia]

Chatwork、1人1アカウントで外部とも連携

 「Chatwork(チャットワーク)」は、企業向けのホームページ集客を支援するサービスを提供していたEC studio社(12年にChatWork社に社名変更、その後18年に現在のChatwork社に再変更)が11年に提供を開始したビジネスチャットである。

Chatworkは「中小企業向け」をうたっているが、大和証券、DNP、スクウェア・エニックス、KDDIなど大企業も多く導入している

 Slackのリリースが14年であることを考えるとかなり早いタイミングで事業をスタートしていたことが分かる。社内外のコミュニケーションがすべてメールで行われていた当時、一部のエンジニアなどが社内のやり取りをSkypeのチャットなどで行っているケースは結構あった。そのような環境の中でEC studio社で内製された社内コミュニケーション用のツールがChatworkである。社内ツールがやがてプロダクトとしてリリースされ、広がっていったストーリーは前述のSlackとも通じるものがある。

 リリースから1年半で10万ユーザーを獲得し、12年に米国に子会社を設立して世界進出を目指すが、この試みは結果として失敗し、18年米国法人を清算している。日本では順調にユーザー数を伸ばして19年に株式上場し、570万人以上のユーザーがいる日本最大のビジネスチャットツールである。

 Chatworkの1つ目の特徴は、1人につき1アカウントという構造だ。Slackのワークスペースのような概念はなく、各アカウントがさまざまなグループに所属し、コミュニケーションを行える。1人が複数のアカウントを持っていないという前提であり、SNSのように名前やメールアドレスで知り合いを探してつながる機能が用意されている。

 過去10年でさまざまなチャットツールが登場したが、メールが未だになくならないのはツールに依存せずに「メールアドレスさえ分かれば、連絡が取れる」という点にある。例えば、Facebook MessengerからLINEにメッセージは送れないし、ChatworkからSlackにも連絡できない。コストや利便性の観点から、有料で使うチャットツールは1つに絞り込まざるを得ないため、社内はもちろんのこと、社外ともコミュニケーションができるほうが望ましい。

 Slackはリリースから数年経ってコネクト機能によって、社外とのコミュニケーションを可能にしたが、Chatworkは最初からメールのように社外ともやり取りできることを念頭に設計されている。ビジネスコミュニケーションの主流であったメールからの移行手段として考えると、当然の帰結である。

Chatworkのアカウント構造、筆者作成

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