ITmedia NEWS >

Teslaは低価格EV開発、BYDは高級ブランド新設 “EV界のトヨタ”になるのはどこか?浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/5 ページ)

» 2023年03月09日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

マスク氏「中国企業がTeslaに次に来る」

 マスクCEOは1月末開催の22年10〜12月期決算発表後にライバルについて聞かれ、「中国の自動車メーカーはハードでスマートな仕事をする。中国の会社がTeslaの次に来る可能性が最も高い」と答えた。

 具体的な企業名こそ出さなかったが、「Teslaの次に来る中国企業」の最有力候補がBYDであるのは間違いない。BYDの22年の新エネ車(商用車を含まず)の販売台数は前年(59万4000台)の3倍を超える185万7000台に急拡大した。

 そのうちEVは同2.84倍の91万1000台。EVだけで見るとTeslaの約131万台とはまだ差があるが、「Teslaに対抗し得る初めての挑戦者」と世間に認められるまでに成長した。

 絶好調のBYDだが、ほんの2、3年前まで同社は「コスパが売りの低価格メーカー」だった。3年前の今頃は自動車事業が振るわず、医療用マスクの生産で稼いでいたほどだ。商用車でEVには早くから進出していたものの、実際は20年までガソリン車の生産がEVを上回っていた。

 そこから本気のEVシフトに取り組み、22年3月にはガソリン車の生産を終了。昨年以降は海外進出も加速し、今年1月末には日本でも、e-SUV「ATTO 3(アットスリー)」を発売した。業界関係者は「BYDはどちらかといえばダサい印象だったのに、数年間で企業イメージががらっと変わった」と口をそろえる。

 BYDがTeslaと肩を並べるメーカーになるために、海外進出と両輪で進めているのがハイエンドへの延伸だ。

 昨年末に立ち上げを発表した高級ブランド「仰望」は車両価格80〜150万元(約1600万〜3000万円)のEVを展開し、トヨタ自動車のレクサスのように独立した販売・経営体制を予定している。さらに2月末、BYDが内部で「Fブランド」呼ぶ新ブランドの準備を始めていると現地メディアが報じた。FブランドもBYDから独立して運営され、「BBA」(BMW、Benz、Audiの頭文字)と同等の価格で従来のBYDとは全く違う革新的なEVを開発することを目指しているという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.