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Teslaは低価格EV開発、BYDは高級ブランド新設 “EV界のトヨタ”になるのはどこか?浦上早苗の中国式ニューエコノミー(5/5 ページ)

» 2023年03月09日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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両社が目指すのはEV界のトヨタ?

 10〜30万元(約200〜600万円)のミドルエンドで躍進したBYDは、たしかに新エネ車の販売台数で世界首位に立ち、「Teslaのライバル」と認知されるようになった。だが、ユニクロとルイ・ヴィトンが比較されることがないように、BYDとTeslaは、今のところ違う土俵で、違う顧客にEVを売っている。現時点ではBYDの現在の顧客は日本円にして1000万円超の高級車を検討しないだろう。

 中国の消費マーケットでミドルエンドは淘汰されるリスクが高い市場でもある。ブランド力の高いハイエンド企業はどこかの時点でミドルエンド獲得に動き出すことが多く、高級でも激安でもないブランドは生き残りが難しい。BYDが高級ブランドを立ち上げるのは自然な流れではある。

 Teslaは強いブランド力を基盤にボリュームゾーンをかっさらい、挑戦者を突き放そうと、車種を拡大する。説明会では開発中の小型EVをトヨタ自動車の「カローラ」と比較したと報じられた。薄利多売のビジネスモデルからようやく抜け出したBYDは、Teslaが今のセグメントにとどまっている数年のうちに、レクサスのような国を代表する高級ブランドを軌道に乗せたいところだ。

 EV業界でのTeslaの一強体制は崩れつつあるが、同社が大衆車市場に本格参入し、200〜300万円のEVを展開すれば、次はガソリン車を含めた競争環境が一変する。Tesla、BYDともに目指したいのは、EVが普及した世界での“トヨタのような立ち位置”なのかもしれない。

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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