柴田さんは、今後のP2P技術の適用について、こう語る。
「一つは自動運転です。現在の自動運転の多くは、走行状況などのデータを適時サーバに送信しています。しかし、車同士がサーバを介さず直接データをやりとりできれば、より迅速な予測・判断・制御が可能になります。また、交差点で車同士が、お互いこれからどう動くか通知できれば、より安全な車社会が作れます」
要は、端末同士が協調したほうが、効率よく大きな仕事が成し遂げられるということだ。昨今、製造業を中心に注目されているスマート工場でも同じことがいえる。製造機器同士が直接コミュニケーションできるようになれば、自律的なモノづくりに一歩近づく。
Skeedの白川正人CEOは、既存のスマート工場の課題をこう語る。
「既存のスマート工場では、IoTデータをクラウドなど工場外のサーバに送ることが多いのです。しかし、多くの製造業は、工場外の機器やネットワークが原因でラインが止まるのを防ぎたいと考えています。ですから、P2P技術を使って工場内のネットワークで完結させることに価値があると思っています」
映画では、2ちゃんねるの住人から続々と支援金が集まる様子も描かれた。「実は私も支援金を送った一人なんです」。当時、大きなプロジェクトで追い込まれていた白川さんは、2ちゃんねるの「WinMXの次を考えるスレ」が心のよりどころだったそうだ Photo by M.S.「Winnyは当時多くの人に使われ、ノード数がとてつもなく増えました。あのときの振る舞いを、金子さんは『面白い』と言っていたんです」(飯澤さん)
「金子さんがP2P技術に目をつけたのは、そんな理由だと思うんです。カチッとしたプログラムを書いて、理路整然と動かすのではなく、小さな端末がそれぞれ自律的に動きながら、全体として何となくうまく動く、みたいな」(柴田さん)
どう動くかなんてやってみなきゃ分からない。人智すら越えた動きをするかもしれない。そういうものがたまらなく面白くて、手を動かさずにはいられない。そんな感覚が、金子さんを突き動かしていたのではないだろうか。
金子さんは、2012年のインタビューで、こう語っていた。
「私の場合、表現方法がプログラムなんです。『面白いことを思いついたんだけど、こんなのどうですか?』って。究極の趣味プログラマーなので、きれいなプログラムは書けません。実験的で、動くかどうか分からないようなコードを書くのが得意なんです。そもそも動くって分かっているものが、あんまり好きじゃない。動かないと思うんだけど、動いたらラッキーみたいな」
インタビューでは、警察が押収しなかったバックアップの中にWinnyのソースコードが残っていたこと、引っ越しを機に、(映画にも登場した)愛用の電動式起き上がりベッドは捨ててしまったこと、キーボードを抱えるか枕元に置いて寝ていることなども教えてくれた。「パソコンがないと何にもできないヤツなので」。金子さんは肩を揺らして笑った。そして、若いプログラマーにこんなメッセージを送った。
「裁判では、やれるだけのことをやって無罪を勝ち取りました。私が有罪になるよりは、無罪になる方がプログラマーにとっていいだろうと思って頑張りました。私も若い頃と違って無理がきかなくなってきたんですけれども、若いんだから、頑張って張り切って、すごいプログラムを作ってください」
“Winny事件”題材の映画「Winny」、本編映像を一部公開 公開は3月10日
「モロさんはスパルタクスだった」──Coinhive裁判がもたらした“抑止力”
最高裁で逆転無罪の確率は0.02%──針の穴を通したCoinhive裁判 覆った“従来の法解釈”
Coinhive裁判4年間の舞台裏 担当弁護士が見た、始まりから逆転無罪前夜まで
「その理屈なら、日本にネット引いた俺がほう助じゃん」 Winny裁判での村井純氏の“漢”っぷり、弁護人が振り返る
「ラブひな」全巻無料公開へ 赤松健氏、ネット漫画の新ビジネスに挑戦Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR