人物写真の調整は、人の輪郭にそってマスクを作ることが重要となる。調整効果が背景にも及ばないようにするためだが、人体は髪の毛や服など不定形なものが多く、自動マスク機能の進化が大きく期待される部分である。
新バージョンでは、「マスク」機能を展開すると自動的に人物を探し、マスクを生成する。「人物」のアイコンをクリックすると、眉、白眼、唇、「顔の髪」(ヒゲのことか)、といったパーツごとにマスクを選択することができる。AIによる顔認識と組み合わせた切り出しが強化された部分である。
例えば筆者の顔でヒゲを選択すると、筆者の顔に鼻ヒゲはないが、それらしき部分にマスクがかかる。ここだけディテールを強調したり、髪のカラーを抜いたりといったことができる。眉毛を濃くしたり、肌の色を変えたりすれば、なんとなく同一人物だが微妙に違う写真ができあがる。
マスクごとに調整パラメータが分かれるわけだが、マウスを画像の上にオーバーレイすると、それぞれのマスクの上にマーカーが表示される。ここをクリックすると、各マスクごとの調整パラメータにすぐに切り替えることができる。
なお新バージョンでは、AltキーまたはOptionキーを押してホールドすると、各調整パラメータの名前が「リセット」や「初期化」に変わる。効果を消したいパラメータをクリックすれば、そのパラメータだけをリセットすることができる。
こうしたポートレート特化した編集が可能になったのが、今回のアップデートの特徴だろう。このベースにはAIによる顔認識技術が使われており、複数人が写っていれば各人ごとに調整ができる。
これまでLightroomは、風景などに対してザクッと補正できるツールで、細かいことをやりたければPhotoPhopでブラシツールを使って補正、という流れができていたと思うが、今回のアップデートでポートレートものに関しても、かなり深く、かつ簡単に追い込めるようになった。
Lightroomは、他の画像と組み合わせた複雑なレイヤー合成や変形ができるわけではないが、写真を写真のままで扱うツールとして、完成度を高めている。ただ今一つ、デスクトップ版でガーンと普及が見えないのは、やはりLightroomとLightroom Classicの2本立てであることのわかりにくさや、UIや機能としてはどちらもいいところもあり悪いところもあり、どちらをお勧めと言い切れないところにあるのではないだろうか。どちらかと言えばモバイル版が主戦場もソフトなのかもしれないが、RAWのノイズリダクション機能はデスクトップ版のみと、状況が複雑である。
バージョンが多ければそれだけ開発リソースも多く必要になっているはずだが、それなりに歴史を積み重ねたソフトなだけに、どこかに一本化すると過去ユーザーが困るという微妙なところなのだろう。「アルバム」単位でプロジェクト化できることから、業務ユーザーには便利なのかもしれないが、個人向けには写真ブラウザとしての機能が弱い事から、正直どうなりたいのかがよくわからないソフトである。
AIを活用した新機能も大事だが、今Lightroomに必要なのは、「将来のビジョン」であろう。
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