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「頭がいつもと違う動きをした」 星空の下、“SF思考”で議論 生まれたアイデアは? NECとコニカミノルタの共創を追うSFプロトタイピングの事例を紹介(3/4 ページ)

» 2023年05月29日 07時30分 公開
[大橋博之ITmedia]

場をセットしたコニカミノルタ
135億年を凝縮したプラネタリウム 「未来に飛ぶのに良い場所」 

大橋 コニカミノルタのお二人は、ワークショップを終えられてどのような感想をお持ちですか。

神谷 未来を考えることは、仕事で日常的にやっています。しかし、今日のようなプラネタリウムというロケーションでやるのはなかなかない経験です。雰囲気も良く、リラックスしてできました。

 SFプロトタイピングは知っていましたが、われわれが未来を考えるアプローチとしては「スペキュラティブデザイン」「トランジションデザイン」といったデザイン手法を使って視覚的に訴える取り組みが多く、SFプロトタイピングのような言葉によるストーリーを作ることはしてきませんでした。しかし、言葉は誰でも理解できるし、自分なりに解釈もできます。ストーリーを作るといろんな人が意見を言い合える。そこは面白いと思いました。

大江原 イマジネーションを広げることを、言葉でできるということを実感しました。ファシリテーターの宮本道人さんのチョイスも良くて、言葉によって発想を飛ばせてくれたという実感はあります。

photo コニカミノルタの神谷泰史さん

神谷泰史(コニカミノルタ)

Copenhagen Institute of Interaction Design(CIID)修了。情報科学芸術大学院大学博士後期課程在籍。TAKT PROJECTアートストラテジスト。アート、デザイン、ビジネスの間をつなぐ方法論の研究と実践を行う。2019年よりコニカミノルタに入社。イノベーションデザインマネジメントとして、コニカミノルタデザイン思考の体系化と社内浸透、新価値創出スタジオ「envisioning studio」の立ち上げ、社内外との未来価値共創の推進を行う。


photo コニカミノルタの大江原容子さん

大江原容子(コニカミノルタ)

デザインセンター所属。UXデザイナー。複合機のアプリや新規事業のデザインに携わり、現在はコニカミノルタ直営のプラネタリウム施設全体のデザインを担当。2017〜2022年にプラネタリウム満天、プラネタリウム天空、プラネタリア TOKYO、プラネタリア YOKOHAMA 、プラネタリウム満天 NAGOYAの直営5館でグッドデザイン賞を受賞。


大橋 大江原さんはプラネタリウム空間のデザインを担当されているのだとか。宇宙とSFは親和性も高いと思います。未来を考える場所としてプラネタリウムは良い空間だと思いました。

大江原 おっしゃる通り、宇宙から未来はイメージしやすいですよね。プラネタリウムは未来に飛ぶのに良い場所だと改めて感じました。これからプラネタリウムでのワークショップが流行れば良いですね(笑)

大橋 ワークショップの冒頭、プラネタリウムの紹介で「プラネタリウムは、現在観測されている135億年分の星空のデータベースを自由自在にビジュアライズすることで、人々の『観たい』に応えています」とありました。この135億年分の星空のデータベースという表現は面白いと思いました。本当に135億年分の全星空のデータベースがあるわけではなく、観測されている最も古い銀河が135億年前なので、地球軸というより宇宙軸での135億年なのですが、逆にロマンがあると思いました。

大江原 プラネタリウムのメンバーから出てきた言葉です。「いいね」となって採用しました(笑)

photo プラネタリウムの紹介

神谷 われわれは、モックアップを作るなどして普段から未来を形にしてきましたが、SFプロトタイピングは文章で未来を形にする。そのプロセスが興味深い点です。今回なら135億年と聞くとロマンを感じる。そこは文章の強みだと思います。

大橋 今回のセッションでは未来に飛べましたか?

大江原 135億年からその気になっていました(笑)

神谷 われわれがビジネスを考えるとき、今を起点にして3年先、5年先を考えます。100年、200年単位で考えることはありません。それに対して星は135億年という果てしない時間があり、そこからイメージがインプットされる。発想できることは多々あると思いました。

大橋 他社とコラボレーションする意義をどうお考えですか?

神谷 私が所属している「envisioning studio」(エンビジョニングスタジオ)という組織では、自社の従業員だけでなく社外のクリエイターや他企業の方と共同でプロジェクトを行っています。最近では、感性的なところに興味がある方とコニカミノルタの祖業である写真を起点に未来を描くワークショップを行いました。

 社内では同じ文化を共有している人たちなので発想の幅が限定されるものですが、外部の方が入ると一気に広がります。そこは取り入れたいと考えています。

photo 星空にNECとコニカミノルタのロゴを浮かべて、コラボレーションを演出した

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