「もともと私はコンビニコーヒーでも満足できるタイプでした。ただ20年頃、身の回りでスペシャルティコーヒー(一定の基準を満たした高品質なコーヒー豆)が流行っていることが気になりまして、実際に試すようになったんです。すると次元の違う味だなと感じまして、自宅でも入れたいと思ったのが始まりでした」(和泉さん)
折しもコロナ禍で在宅勤務が推奨されている時期。時間も十分にあり、スペシャルティコーヒーをハンドドリップしてみることにした。コーヒーを入れるための道具は自宅にもあり、美味しいコーヒー豆を買って帰ればいいと、軽く考えていた。
しかし、実際にやってみると、店のような味にはならなかった。買ったばかりの新鮮な豆を使っているし、お湯の温度も聞いた。それで入れてもうまくいかなかった。そんな体験から、自宅で簡単にスペシャルティコーヒーを美味しく入れられるコーヒーマシンがあるといいと考えた。
「お店で詳細を聞いても、実際には美味しく入れられないというお客さんの声が多数ありました。『そもそもハンドドリップって難しいんだよ』とも言われました。お湯の温度や注ぐスピードが違うだけでも味は変わります。さらにドリッパーの形も多数あり、プロはそれらをコントロールして入れている。それを再現したいと考えたのです」(和泉さん)
一般的なハンドドリップは、コーヒーの粉にお湯を上から注ぐ「透過式」でコーヒーを抽出する。しかし「サイフォニスタ」は、コーヒーの粉をお湯に漬ける「浸漬式」を採用している。これを決めたのも和泉さんだ。
「スペシャルティコーヒーの品質は、カッピングという方法で評価されていました。この方法は浸漬式だったんです。スペシャルティコーヒーが持つ本来の香りや味を引き出せるのは、浸漬式だという仮説を立てました」(和泉さん)
そこで和泉さんは、浸漬式での抽出方法を学んでいった、浸漬式の代表的な抽出方法には、フレンチプレスやサイフォンがあるが、和泉さんはサイフォンに思い出があった。
「父がコーヒー好きで、昔、自宅にサイフォンがあったんです。帰省したときにそんな話をしたら、『サイフォンって楽しかったんだよ』と言われて、サイフォンみたいなコーヒーメーカーができたら面白いんじゃないかなと考えました」(和泉さん)
和泉さんの企画は、それまでにタイガーが作ってきたコーヒーメーカーとは全く異なるアプローチだった。会社側は「なんか一生懸命言っているからやらせてみるか」という反応だったそうだ。
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