7月1日からTwitterに閲覧制限がかかっており、他サービスへの移行を検討するユーザーが増えている。中にはできるだけTwitterに近いサービスを求め、FacebookやDiscordといった大手SNSやチャットツールではなく、比較的新しいSNSに注目する人も見られる。
一方、当の新興SNSの中にはまだ大量のユーザーを受け入れられる状況にないところもあり、事態は混迷を極めるばかりだ。そこで本記事では、Twitterからの“移住先”として注目を浴びる新興SNSの受け入れ体制について、現状をまとめる。
分散SNS「Mastodon」はユーザーが急増中だ。合計アクティブユーザー数は先週末に約29万4000人増加。投稿は3倍になったという。
MastodonはTwitterのような感覚で使えるSNSだが、その構造は異なる。企業や有志のユーザーがそれぞれ立ち上げた「インスタンス」というサーバ単位で住み分けるのが特徴だ。一般ユーザーはインスタンス内で交流できる。別インスタンスの投稿を見に行くこともできるが、Twitterのように単一の空間に全ユーザーが同居しているイメージではない。
参考:Mastodonのユーザー急増、投稿が約3倍に Twitter混乱で
参考:マストドンつまみ食い日記
日本では日本人向けの「mstdn.jp」やクリエイター向けの「pawoo」といったインスタンスが有名だ。どちらも新規登録の制限などはしていないが、ユーザーが増えているためか動作が重く、思うように操作できないときがある(7月4日時点)。
分散SNS「Misskey」の最大手インスタンス「Misskey.io」は、7月4日時点で新規登録を一時停止中だ。ただし、招待コードがあれば他ユーザーに優先してアカウントを作成できる。招待コードは一部の既存ユーザーから譲り受けるか、クリエイター支援プラットフォーム「pixivFANBOX」で提供中の有償プラン(600〜1200円)を契約することで受け取れる。
参考:話題の分散SNS「Misskey」が居心地いい 行儀悪くて笑えるあのころのインターネットが帰ってきた ユーザー爆増中
参考:Twitterからの移住者か、「Misskey.io」登録者20万人超え 1日で4万人増も一筋縄ではいかず
MisskeyはMastodonと似た構造のサービスで、誰でもインスタンスを立ち上げることが可能だ。現在でも、Misskey.io以外のインスタンスであれば、平時と変わらず登録できるところもあるので、人数の多さにこだわらなければ今すぐ利用できる。
Twitterの競合とうわさされる米Metaの新サービス「Threads」。7月3日には、米AppleのApp StoreでiOSアプリ版のストアページが公開された。リリース予定日は6日という。日本語もサポート予定だ。
参考:Meta、Twitter競合の「Threads」の“予約注文”ページをApp Storeで公開
ページの表記によれば、Threadsは「Instagramのテキストベースの会話アプリ」という。サービスの詳細については「コミュニティーが集い、関心のあるトピックから次に来るトレンドまで何でも話し合える場です。興味・関心のジャンルが何であれ、お気に入りのクリエイターや自分と同じ興味・関心を持つ人をフォローし直接つながることができます。あるいは、自分の熱心なファンを増やし、世界に向けて自分のアイデアや意見、クリエイティビティを発信することができます」としている。
Twitter(現在はX社)創業者のジャック・ドーシー氏が支援するSNS「Bluesky」は新規登録を停止中だ。2日午前4時ごろ、「記録的なトラフィック急増により性能が一時低下している」と投稿。その後「問題が解決するまで」として新規登録をストップした。
参考:Twitter障害はスクレイピングではなく“自己DDoS”が原因?
BlueskyはTwitterに似たUIのSNS。分散型のサービスで、ドーシー氏の支援を受けていることもあって“ポストTwitter”として注目を浴びていた。
ただ、まだ正式なサービス提供の段階ではなく、プライベートβを提供しているところだ。そのため新規登録の停止前から、他のユーザーによる招待か、待機リストへの登録が必要だった。Twitterとは機能も異なり、投稿やその閲覧、リスト機能に似た「Custom feeds」などは使えるが、プロフィールの非公開化(いわゆる“鍵垢”)などは対応していない。
Anokuma(東京都港区)が手掛ける創作者向けSNS「くるっぷ」は、利用者数が急増したとしてアクセスを制限中だ。有償サブスクリプションに加入しているユーザーのみサービスを利用できる。今後、状況が改善し次第制限を解除するという。
くるっぷは「オタク向け全振り」をうたう国産SNS。単一のID・パスワードで複数のユーザーアカウントを作成できる機能や、複数の投稿をひとまとめに管理できる「クリップボード」が特徴だ。TwitterのCEOがイーロン・マスク氏に交代して以降、同人クリエイターなどを中心にTwitterの移行先として注目を集めていた。
ただし運営元Anokumaの中村清夏代表は自身のTwitterアカウントで「くるっぷはそもそもTwitterの代替を目指して作られたサービスではない」と、サービスのコンセプトが異なることを強調している。
Twitterを巡る混乱はもはや、大騒動といっていいかもしれない。ニュースを取得するためにRSSに注目する人や、ドナルド・トランプ前米大統領が立ち上げた独自SNS「Truth Social」を試してみる人まで出てくる始末だ。
一方で「インスタンス単位ではなく世界単位で緩くつながれるTwitterがいい」「企業の公式アカウントなどが充実していないと満足できない」として、移住をためらうユーザーも少なくない。中には「Twitterと共にインターネットから去る覚悟」とする人もいた。
いずれにせよ、Twitterユーザーを丸ごと受け入れるような強大なインフラは、一朝一夕で出来上がるものではない。Facebookなど大手SNSに移行するならまだしも、全く同じユーザー体験を今すぐに、というのは難しい話だろう。Twitterが今後どうなるかは定かでない。とはいえ、自分の情報発信・取得の方法に合わせ、最適なSNSの使い方や組み合わせを今のうちに模索しておく価値はあるかもしれない。
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