稲見 だって普通に、いわゆる「テレイグジスタンス」や「テレプレゼンス」って、座っているお尻とか自分の肉体の感覚もあったりする中で遠隔ロボットに入った感覚もしますよね。しかもその状態で両方の映像を1:1で混ぜてあげると、どちらかに注視してどこで作業して、そこで次はこちらでやって、ができますね。
山田 そっか。1個くらいだったらできそうですね。
稲見 じゃあどこまで増やせるのかって話もあるんですけど、人間拡張って最初は、新しく入ったものをすごく器用に動かせるとか、自分の身体と同じくらい思いのままに動かせるってことだと思ってたんですけども。
よくよく考えると我々の体がある意味、すでにサイボーグ的とも言えるかもしれない。つまり心臓って何も考えなくても動いてますし、呼吸もそうですね。歩きスマホも、やっているとき歩行は全然マニュアルじゃない。
どう動かすかなんて全く意識しないけれども、つまづきそうになったときにはウッと足に意識のフォーカスがいく。つまり、そういう自動と手動との間を意識のフォーカスによってシームレスに切り替えられる範囲こそが自分の身体なんだと。
それが自分の体内だけじゃなくて、体外システムにもそれができるようになった時点で、我々はそこに身体の拡張を感じるというのが、私が「自在化」と表現していることの本質です。
山田 実は今描いている話、今の話とすごい繋がってて、要するに仮想空間の体験ってのは、実はAI化した自分が半分以上やってるみたいな立て付けなんですよ。自分のライフログみたいなのを収集して「この人ってこういう人だよね」っていうある程度分かったAIっていうのが動きをサポートする。
向こうの視覚とかいろんな五感の体験とかは来るんだけど、必ずしも全部自分で動かしてるわけじゃなくて、AIがその動きをサポート、なんならもう片代わりしてるみたいな。そういう世界観で別の世界や別の人生を同時に楽しめちゃうみたいな話をちょうど書いてたんですよ。
稲見 それがムーンショット目標1です(編注:ムーンショット型研究開発制度…日本が抱える課題解決に向けて国が特に定めた9つの研究開発目標)。
山田 マジですか!?
稲見 ムーンショットの「サイバネティック・アバター基盤」は2030年までに1人で10体以上のアバター操作を可能とするための研究開発を行っています。
山田 いやーダブっちゃいましたね。あの内容に説得力が増したようでよかったです。
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