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テスラ「Model 3」のオーディオ性能を音響エンジニアがガチ評価 ハイレゾ音源は効果なし?走るガジェット「Tesla」に乗ってます(2/6 ページ)

» 2023年08月06日 18時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

ロスレスオーディオには非対応

 さっそく、TeslaのApple Musicアプリを起動してあらゆる音源を試聴しました。当たり前ですが、iPhone同様にApple Musicのコンテンツを普通に楽しめます。同じApple IDでログインしていれば、iPhoneなどで利用した際の履歴やリコメンドもそのまま継承されます。

 残念に思うのは、Apple Music最大の特徴であるロスレスオーディオや空間オーディオにTesla向けのApple Musicは非対応だという点です。Apple Musicの標準的な音声コーデックであるAACによるロッシー音源での配信のようです。

 iOSやmacOS端末の「ミュージック」アプリで聴くApple Musicは、2021年春からロスレスオーディオや空間オーディオに対応済みなだけにオーディオファンとしては残念な気持ちです。

Apple Musicアプリのホーム画面。iPhoneのような「音量を自動調整」がないので、リコメンドの連続再生時に楽曲ごとのレベルの違いに戸惑う

 ロスレス音源による配信は、ロッシー音源と比較して多くの帯域を必要とするので、Tesla JapanがNTTドコモと契約している回線容量では無理があるのかもしれません。ただし以前、イーロン・マスク氏は、アップルのAirPlay対応を示唆する発言をしています。それが実現すると、iPhoneで受信したロスレス音源をAirPlay経由で聴けるようになるかもしれません

筆者が手がけたアルバムで試聴してみた

 Apple Musicとハイレゾ音源を利用して、Model 3の音質評価を実施しました。

 聴取実験では、筆者が録音、マスタリング、配信までを手がけた次の2枚のアルバムを使いました。1点めは、ピアニストの下山静香による『ピアソラ×ピアノ』です。アルゼンチンタンゴの巨匠アストル・ピアソラは、クラシカル作品も遺しており、それら秀作をソロピアノのアルバムとして結実させたものです。

 もう1点は、超絶技巧のクラシックギタリストであるホルヘ・カバジェロによる『新世界』です。ドヴォルザークの壮大なオーケストラ楽曲を日本の天才ギタリスト山下和仁がギター用に編曲した作品です。多層的・多重的に奏でられるメロディやフレーズは、2〜3人で弾いているかのように錯覚してしまいます。

 この2枚のアルバムのマスタリング後のソース音源である192KHz/24ビットのWAVファイルをSSDにコピーし、Model 3のUSB端子経由で再生した場合と、TeslaのApple Musicアプリで配信されている同アルバムを聴き比べました。Apple Musicの聴取は、Wi-Fiではなく、LTE経由の接続で再生しました。

 この2枚のアルバムは完パケまでの行程でそれぞれ100回は聞いているので自分の中に音のイメージが完成された形で記憶されています。今回の聴取実験には最適だと判断しました。

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